緑の黙示録
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緑の黙示録 | |
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ジャンル | 植物漫画 |
漫画 | |
作者 | 岡崎二朗 |
出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 月刊アフターヌーン |
発表号 | 2001年3月号 - 2003年2月号 |
巻数 | 全1巻(アフターヌーンKC、講談社) |
話数 | 4話 |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | 漫画 |
ポータル | 漫画 |
『緑の黙示録』(みどりのもくしろく)は、岡崎二郎による漫画作品。全4話が「月刊アフタヌーン」の2001年3月号,2001年11月号,2002年7月号,2003年2月号に掲載された[1]。単行本は全1巻が発行されている。
各話の末尾には内容に関連する参考資料が提示されている。
あらすじ
- 第1話 ウパス
- 山之辺美由は小さな頃、父親が「ひのきじいさん」と話しをしているのを見て、自分もおはようと挨拶するが全然返事はない。父親はゆっくり時間をかけなければならないと教える。そのとき、美由は電話のように木とお話しできる機械を思い付く。
- 高校生になった美由は植物と話せるようになる。昼休みに校庭の古いケヤキの声を聞き、幹にウロができているのを発見する。篠原先生は美由の能力をうらやましがる。美由は森山教授のいるK大進学を切望しているが、家庭教師役の克也の評価はとても厳しいというものである。
- 校内の温室内のウパスの木の下で評判の悪い先生が心臓発作で死亡しているのが発見される。美由はウパスの葉が疲れていることを知り、ウパスが心臓に強く作用するアンチアリン配糖体を大量に放出したのではと推理する。美由は篠原に揮発性の植物ホルモンを使用し、ウパスから毒素を放出させたのではないかと問い詰める。美由の推理は当たっており、篠原はウパスに指令を出して温室から出る。美由たちは温室内で倒れるが、篠原は2人を救出し救急車を呼ぶ。
- 冬が始まる頃になっても美由の心は晴れない。しかし、帰宅すると克也とあこがれの森山教授が待っている。森山教授は美由とひとしきり植物談義を交わし、その植物に関する知見を知り、K大の推薦入学を約束してくれる。ただし、もう少し内申書の成績を上げることが条件である。
- 第2話 ケヤキ
- 美由は空き家になった篠原の家を訪ね、放置された植物の世話をする。その近くにはすばらしい自然の森があり、美由はその森の散策が楽しみである。ある日、美由は不思議な男性に出会う。営林署の職員から彼は「山丈」と呼ばれ、開発の中断で荒れ地になった土地を30年間で自然の森に近い形で再生したことを聞かされる。
- ところが、県はその森をリゾート開発することを決定した。美由はケヤキの老木の話しを聞こうとしていると、山丈が現れ2人でケヤキの話しを聞く。美由はケヤキが山丈をとても信頼していることを知る。このケヤキは以前の開発で枝を半分を伐られ、山丈に助けを求めたという。県の開発決定に対して山丈は30年かけて育てた森も消えるとなると簡単なものさと語る。
- 開発工事は唐突に始まる。ケヤキの老木も伐られるという。美由はくやしいと嘆く。山丈は「あのケヤキはもう自分一本になっても生きていこうなんて考えちゃいない」と話す。「人間は何度でも同じ過ちを繰り返す」、「お前さんは樹木から憎悪を感じたことはないか」と美由に聞く。
- その夜、山丈はケヤキの老木に向かって大声で叫ぶ。ケヤキは一晩で枯れてしまい、原因は不明である。森山教授は「音は植物にとっては生長への良い刺激にもなるが、ときには凶器にもなる。山丈の叫び声があのケヤキを枯らしたのかもしれない」と語る。
- 第3話 ブナ
- 美由はK大に入学することはできたが、基礎学力の不足を補うのに苦労する。また森山教授が美由の植物に対する感性を高く評価するため周囲の反発を買うことになる。春休みに美由は雨宮の誘いで朝日連峰の近くにあるY大の演習林を見に行く。演習林から見るブナの森は絶景である。雨宮は「アカゲラの森」にある大蛇神のブナと呼ばれる老木に案内する。この老木の話を聞いた美由は山丈の言っていた「憎悪」を感じてたじろぐ。
- アカゲラの森に異変が起きた。鳥たちがバタバタと木から落ち、人も倒れる。雨宮は美由にアカゲラの森と大蛇の化身についての言い伝えを話す。2人はテレビニュースでアカゲラの森での異変を知る。美由が規制線の外にあるブナの木の話を聞くと大蛇神のブナと同じ憎しみが伝わってくる。
- 美由は数種類の木の枝を折り、克也に泣きついてK大で分析をしてもらう。結果はテンペルが通常の500倍、タンニンが通常の1000倍も検出され、高濃度のフィトンチッドによる中毒の可能性が出てきた。刑務所に収監されている篠原からフィトンチッドの実体は植物毒素であり、濃度が高くなれば影響が出ることを教えられる。さらに、アカゲラの森にサクラやクルミのようなより毒性の強い木があれば危険性は増すという。
- アカゲラの森では大勢の人々が集り、再び異変が発生する。美由は大蛇神のブナに懸命に語りかけるが効果はない。美由は篠原が調合した植物ホルモンを使用して危機を沈静化する。美由が使用したのは「危険は去った、平静に戻れ」という命令を意味するものであった。美由はブナの森から立ち上る青い大蛇を見る。それは、ブナから立ち上る揮発性有機物質であり、その微粒子が青い光をより強く散乱させる現象である。
- アカゲラの森は危険ということで伐採され、大蛇神のブナだけが残される。1年後に美由が訪問すると、大蛇神のブナは観光資源となっており、老木から美由は何も聞くことはできない。
- 第4話 サクラ
- 住宅開発の現場で作業員がガス中毒になる事件が相次ぐ。大蛇神のブナが人間に向けた憎悪について美由が「けやきじいさん」にたずねても、いつものように包み込むような暖かさが返ってくるだけである。父親から木の伐採中にガスで倒れる事件を聞いて、植物の反乱が頭をよぎる。
- 美羽が現地を訪ねると、周辺の樹木は若く、一番大きな木に話しかけても反応はない。美由は美輪の表札のかかる家に桜の古木があるのに気が付き、インターフォンから木を見たいと話す。若い女性は美由のことを知っており、桜の古木を見せてもらう。古木との会話で桜がその女性をとても愛していることが分かる。
- 森山教授はブナの意識が森全体に広がるのは不思議であり、何が森の樹木をつないでいるんのだろうと疑問を投げかける。教授は地面を掘り、樹木の根が大きな広がりをもつことを示し、一つの仮説として異なる樹木の根が癒合(ゆごう)をあげる。
- 工事に合わせ美輪家を見張っていると、あの女性が桜の木と会話するとガスが発生し作業員が倒れる。美由は女性に桜の木を使って人を傷つけることは止めるよう話す。女性はこの町の緑がはぎ取られるのはたまらないと話す。しかし、町中の樹木がネットワークを介して毒をまき散らしていることが分かり、桜の古木に止めろと叫ぶ。毒の放出は唐突に止まった。それは、「けやきじいさん」がネットワークを通じて止めてくれたのだ。
登場人物
- 山之辺 美由(やまのべ みゆ)
- 本作品の主人公。初登場時は高校3年生。子どもの頃、父親から植物と話せることを教わり植物と話せるようになる。推薦入学でK大に進む。
- 篠原(しのはら)
- 美由の通う高校の教師。植物に詳しく、ほとんど一人で倉庫を改造して温室を作る。
- 唐沢 克也(からさわ かつや)
- 美由の従兄弟。K大理学部3年生。美由の勉強を見てくれるが、K大は難しいとはっきり言う。
- 森山(もりやま)
- K大教授、美由は彼の本に感動し、そこで学びたいと切望する。
- 山丈(やまじょう)
- 名前も素性も分からない。植物に関する深い知識をもち、30年かけて荒れ地を森を再生する。
- 雨宮(あまみや)
- 森山の教え子。Y大の演習林で森林環境の研究をしている。
- 美輪(みわ)
- 桜の古木と話すことができる。周囲の樹木の伐採を止めるため植物由来物資で中毒を起こさせる。
書誌情報
- 岡崎二朗『緑の黙示録』講談社、〈アフターヌーンKC〉、全3巻。
- 2003年3月20日第1刷発行、ISBN 4-06-314317-1[2][3]。
作品中に提示された参考資料
- 第1話 「植物たちの秘密の言葉」、ジャンヌ・マリー・ベルト(工作舎)
- 第1話 「植物の世界89 ウパス」、堀田満(朝日新聞社)
- 第2話 「植物たちの秘密の言葉」、ジャンヌ・マリー・ベルト(工作舎)
- 第2話 「動く植物」、P.サイモンズ(八坂書房)
- 第3話 「アラスカ物語」、新田次郎(新潮文庫)
- 第3話 「植物の不思議な力=フィトンチッド」、B.P.トーキン/神山恵三(講談社ブルーバックス)
- 第4話 「樹木学」、ピーター・トーマス(築地書館)