M-1グランプリ2020
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M-1グランプリ2020 | |
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受賞対象 | 結成15年以内の漫才師(2人以上) |
開催日 | 2020年8月1日 - 10月4日(1回戦) 2020年10月26日 - 11月5日(2回戦) 2020年11月16日 - 11月17日(準々決勝) 2020年12月2日(準決勝) 2020年12月20日(敗者復活戦、決勝) |
会場 | テレビ朝日(決勝) |
国 | ![]() |
主催 | M-1グランプリ事務局 吉本興業 朝日放送テレビ |
司会 | 今田耕司 上戸彩 |
報酬 | 賞金1000万円ほか |
最新受賞者 | マヂカルラブリー |
公式サイト | 公式サイト |
テレビ/ラジオ放送 | |
放送局 | ABCテレビ・テレビ朝日系列 |
放送時間 | 2020年12月20日 18時34分 - 22時10分 |
視聴率 | 19.8%(関東地区) 29.6%(関西地区) |
『M-1グランプリ2020』(エムワングランプリ2020)は、吉本興業・朝日放送テレビ(ABCテレビ)主催の漫才コンクール「M-1グランプリ」の第16回大会。2020年12月20日に決勝戦が開催され、ABCテレビ・テレビ朝日系列にて生放送された。優勝者はマヂカルラブリー。
概要
通算16回目となる2020年大会は新型コロナウイルス感染症の影響を受け開催を危ぶまれていたが、慎重な対策と大会形式の変更を以て無事開催された。1回戦は総じて無観客で行われたのに加え、3回戦が省かれることとなった。大会には「漫才は止まらない」というスローガンが導入された。ABCテレビプロデューサーの田中和也は「情熱大陸」に出演した東京フィルハーモニー交響楽団が2020年年内に開催した有人コンサート再開の密着取材中に出た「音楽を止めちゃいけない」という言葉を「パクった」とコメントしており、このスローガンが書かれた横断幕が各予選会場に掲示された[1]。決勝戦にはアキナ、マヂカルラブリー、見取り図、ニューヨーク、オズワルドら昨年以前のファイナリストが5組、錦鯉、おいでやすこが、東京ホテイソン、ウエストランドの初進出4組に加えて、敗者復活戦を勝ち上がったグループを含む10組で優勝が争われた。決勝戦の生放送中には朝日放送ラジオにて「ラジオでウラ実況!?M-1グランプリ2020」が放送され、歴代チャンピオンの石田明(NON STYLE)、哲夫(笑い飯)、橋本直(銀シャリ)の3人がM-1グランプリの実況を担当した[2]。
大会経過
1回戦から準々決勝まで
M-1グランプリ2020の1回戦は、2020年8月1日から同年10月4日にかけて東京都、大阪府、北海道、宮城県、愛知県、広島県、沖縄県、千葉県、福岡県の9都道府県で開催された。1回戦はいずれも無観客で執り行われた。大会には前年度の5040組を上回る5081組がエントリーした。同月26日より大阪、東京の2都市で2回戦が開催された。2回戦では出場者の全ネタが大会公式のYouTubeチャンネルにアップロードされる大会初の試みが実現した。準々決勝は同年11月16日に大阪、17日に東京の2箇所で開催された。勝ち上がった25組に、GYAO!ワイルドカード枠を獲得したラランドを加えた26組が準決勝へ進出した。また準々決勝敗退グループのネタの模様は、2回戦と同様YouTubeにアップロードされた。
準決勝(大会経過)
準決勝は12月2日に東京都のNEW PIER HALLにて開催された。この模様は大阪府のクール・ジャパンパーク大阪TTホール、日本各地の映画館にてライブビューイング上映された。ネタ順は抽選で決定され、ワイルドカード枠で勝ち上がったラランドが1番手を、準決勝の常連の錦鯉がトリを務めた。この結果、見取り図が3年連続、オズワルド、ニューヨークが2年連続、アキナが2016年大会以来2度目、マヂカルラブリーが2017年大会以来2度目、おいでやすこが、ウエストランド、東京ホテイソン、錦鯉が初の決勝進出を果たした。錦鯉の長谷川雅紀は1971年生まれの当時49歳で、ファイナリストとして歴代最年長記録を更新した。
敗者復活戦(大会経過)
準決勝敗退者から1組のみが視聴者投票で勝ち上がる敗者復活戦は、12月20日、決勝戦の直前の14時55分より六本木ヒルズアリーナで実施された。ワイルドカード枠で勝ち上がったラランドには敗者復活戦の出場資格が与えられなかった。また、準決勝に進出した祇園の木崎太郎が12月14日に新型コロナウイルスに感染したことが判明し、復活戦開始の直前に不参加がアナウンスされ、敗者復活枠1組を15組で争うことになった[3]。ぺこぱのネタ途中に街宣車の音で一部ネタが聞こえづらくなるトラブルや、ラストとなる15番手に登場したニッポンの社長のネタの途中に、スタッフのミスで余計なSEが入り、さらに17時に流れる防災行政無線の「夕焼小焼」が会場に響き渡ってしまうというトラブルがあった。例年は勝者の発表まで全出場者がステージに登って局内スタジオから中継放送される形式が取られていたが、今年は新型コロナウイルス感染症の流行に人同士の距離を保つ必要から、視聴者投票の結果の一部を事前に確認し、上位3組のみが舞台へ上り、結果を待つこととなった。出場者の全出番終了直後はインディアンス、ゆにばーす、ぺこぱの3組が暫定トップ3に名を連ねた。勝者の発表は決勝ファーストラウンドの順番を決定する「笑御籤」のシステムの観点から、敗者復活戦勝者の出場順が決まった直後に発表される。その結果前述の3組がトップ3を保ち、昨年度ファイナリストのインディアンスが勝利した[4]。
決勝
ファーストラウンド
決勝は敗者復活戦の約1時間後、テレビ朝日のスタジオで開催された。司会進行は前年度に引き続いて今田耕司と上戸彩の二人が務めた。
さらに7名の審査員も2018、19年に続いて上沼恵美子、松本人志、礼二(中川家)、立川志らく、富澤たけし、塙宣之、オール巨人の7名が揃って続投した。審査員席の間をアクリルボードで隔てたり、観客にマスクを着用させたりするなど、予選会に続いて新型コロナウイルスへの感染対策を講じた。
出番順は例年通り「笑神籤(わらいみくじ)」が採用され、全出場者が直前まで出番がわからないシステムであった。
ネタ
1番手は大会初の敗者復活戦枠が引かれ、直後に復活戦の勝利を告げられたインディアンスが登場した。ヤンキーをテーマに田渕がきむの揚げ足を取るボケを連発する漫才を披露。得点は625点と伸び悩んだが決勝出場芸人が10組になってからのトップバッターの最高順位[注 1]を叩きだし、点数も2017年のゆにばーす(626点)に続き歴代2位となった。
2番手に登場した決勝初進出の東京ホテイソンはボケのショーゴが繰り出す言葉遊びに対してたけるが備中神楽の囃子言葉を取り入れた独特なツッコミを繰り出すスタイルの漫才を披露。得点は今大会最低の617点に終わったが、これは最下位の中では史上最高点である。
3番手に登場したニューヨークはボケの嶋佐の小話に散見する小犯罪や奇妙な行為を屋敷が指摘していくしゃべくり漫才を披露、642点を記録し暫定1位につけた。
4番手で登場した見取り図はボケのリリーがツッコミの盛山の芸能マネージャーに扮し盛山を困らせるコント漫才を披露、648点を記録し暫定1位につけた。
5番手に登場したおいでやすこがは、ボケのこがけんが歌う著名なJ-POP楽曲に見せかけた謎の歌に、ツッコミのおいでやす小田が言動共に派手なツッコミを繰り出す漫才を披露し、今大会最高の658点を記録し首位に立った。
6番手で登場したマヂカルラブリーはフレンチレストランを舞台にボケの野田が縦横無尽に動き回る奇天烈とも取られかねないスタイルのネタを披露し、649点を記録し、見取り図に1点差をつけ2位につけた。
7番手で登場したオズワルドはボケの畠中が「自分の名前を発音するとき口が開きっぱなしで怖いから改名する」という題材で、序盤は冷静だが後半にかけヒートアップしていくしゃべくり漫才を披露したが、得点は642点でトップ3には届かず、暫定4位で敗退した。
8番手に登場したアキナはボケの山名が「楽屋に意中の女性を連れてくる」コント漫才を披露したが、得点は622点に終わり、暫定7位で敗退。これにより、暫定1位を守り続けたおいでやすこがの決勝進出が確定した。
9番手で登場した錦鯉は、ボケの長谷川が自身を題材にしたパチンコ台を演じる漫才を披露したが、得点は643点でトップ3には届かず、暫定4位で敗退。これにより、暫定2位を守り続けたマヂカルラブリーの決勝進出が確定した。
10番手で登場したウエストランドはマッチングアプリや女性との恋愛を題材に、ツッコミの井口が自虐を交えた毒舌・悪態ツッコミを連発するしゃべくり漫才を披露したが、得点は622点に終わり、同率8位(最終的には9位)で敗退。これにより、3位になった見取り図の決勝進出が確定した[5]。
最終決戦
最終決戦はファーストラウンド1位のおいでやすこが、2位のマヂカルラブリー、3位の見取り図で争われた[6]。最終決戦のネタ順は今回はファーストラウンド3位→2位→1位の順に自動的に決定され、最終決戦開始前のネタ順選択を兼ねた直前インタビューは行われなかった。
1番手で登場した見取り図はメンバー2人の地元[注 2]を題材にした喧嘩漫才を披露した。
2番手のマヂカルラブリーは「電車のつり革に掴まりたくない」という野田が電車内を舞台に動き回るネタを披露した。
最後に登場したおいでやすこがは、こがけんが歌い続ける歌詞が難解にアレンジされたバースデーソングにおいでやす小田がツッコミを繰り出す漫才を披露した。
最終投票では、松本と上沼がおいでやすこがに投票、オール巨人と塙が見取り図に投票、富澤、志らく、礼二がマヂカルラブリーに投票、3票を獲得したマヂカルラブリーが16代目王者となった[7]。
また2001年から始まったM-1グランプリの歴史において正統派漫才師やオーソドックスなコント漫才師が優勝する事は多く異質の芸風を得意とするコンビは決勝に進出してもあまり評価されずに優勝することは無かったが、今回マヂカルラブリーがそれらを破り優勝を果たした。
結果
- コンビ名、所属事務所は出場当時。
- ■1位及び最終決戦の投票、■2位、■3位、赤数字・青数字は審査員が付けた最高・最低評点。太字は全体の個人最高・最低評点。
準決勝
以下はM-1グランプリ 公式サイトからの引用[8]。太字は準決勝通過組。
グループ | コンビ名 | 所属事務所 | 結果 |
---|---|---|---|
A | ラランド | フリー | 敗退 |
タイムキーパー | 吉本興業 | ||
金属バット | |||
ウエストランド | タイタン | 通過 | |
ニッポンの社長 | 吉本興業 | 敗退 | |
ランジャタイ | グレープカンパニー | ||
B | 祇園 | 吉本興業 | 敗退 |
マヂカルラブリー | 通過 | ||
からし蓮根 | 敗退 | ||
カベポスター | |||
ゆにばーす | |||
キュウ | タイタン | ||
アキナ | 吉本興業 | 通過 | |
C | おいでやすこが | 吉本興業 | 通過 |
オズワルド | |||
ロングコートダディ | 敗退 | ||
インディアンス | |||
東京ホテイソン | グレープカンパニー | 通過 | |
コウテイ | 吉本興業 | 敗退 | |
D | 学天即 | 吉本興業 | 敗退 |
ダイタク | |||
見取り図 | 通過 | ||
ぺこぱ | サンミュージックプロダクション | 敗退 | |
滝音 | 吉本興業 | ||
ニューヨーク | 通過 | ||
錦鯉 | SMA |
敗者復活戦
太字はラストイヤー。
結果 | コンビ名 | 出番順 |
---|---|---|
1位 | インディアンス | 5番 |
2位 | ゆにばーす | 12番 |
3位 | ぺこぱ | 7番 |
4位 | 学天即 | 11番 |
5位 | からし蓮根 | 6番 |
6位 | コウテイ | 3番 |
7位 | 金属バット | 1番 |
8位 | ダイタク | 13番 |
9位 | ニッポンの社長 | 15番 |
10位 | ロングコートダディ | 14番 |
11位 | 滝音 | 9番 |
12位 | タイムキーパー | 2番 |
13位 | キュウ | 10番 |
14位 | カベポスター | 4番 |
15位 | ランジャタイ | 8番 |
欠場 | 祇園 | - |
決勝戦
コンビ名 | 最終 得票 |
合計 得点 |
上 沼 |
松 本 |
礼 二 |
志 ら く |
塙 |
富 澤 |
巨 人 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
マヂカルラブリー | 3 | 649 | 94 | 93 | 96 | 90 | 94 | 94 | 88 |
おいでやすこが | 2 | 658 | 94 | 95 | 95 | 96 | 93 | 93 | 92 |
見取り図 | 2 | 648 | 95 | 91 | 93 | 93 | 93 | 92 | 91 |
錦鯉 | 643 | 93 | 89 | 92 | 95 | 95 | 92 | 87 | |
オズワルド | 642 | 92 | 88 | 95 | 93 | 95 | 91 | 88 | |
ニューヨーク | 642 | 94 | 92 | 91 | 91 | 93 | 93 | 88 | |
インディアンス | 625 | 93 | 90 | 90 | 89 | 85 | 89 | 89 | |
アキナ | 622 | 92 | 85 | 91 | 90 | 87 | 88 | 89 | |
ウエストランド | 622 | 92 | 90 | 90 | 86 | 85 | 91 | 88 | |
東京ホテイソン | 617 | 92 | 86 | 88 | 89 | 85 | 91 | 86 |
最高評点 | 96点 中川家・礼二(マヂカルラブリー) 立川志らく(おいでやすこが) |
---|---|
最低評点 | 85点 塙宣之(インディアンス、東京ホテイソン、ウエストランド) 松本人志(アキナ) |
平均点 | 636.8点 |
社会的反応
出場者
今大会で決勝初進出を果たした錦鯉の長谷川雅紀は「1971年生まれの49歳」であり、ファイナリストの最年長記録を更新した。また、錦鯉の長谷川雅紀と渡辺隆、おいでやすこがのおいでやす小田とこがけん、アキナの山名文和の5名は年齢が40代で、1大会での40代のファイナリストが過去最多となった。
錦鯉はソニー・ミュージックアーティスツで、ウエストランドはタイタンで、初のファイナリストとなった。
おいでやすこがはピン芸人のおいでやす小田とこがけんによる2019年結成の漫才ユニットで、正式ではないグループが決勝進出を果たしたのは初であった[9]。また両者は共にR-1ぐらんぷりのファイナリストであったが、準決勝の1週間前に同大会が2021年大会を以て出場資格を「芸歴10年以内」に変更したため出場資格を失っていた。R-1出場不可能となってM-1決勝進出という流れは転禍為福と評され話題となった[10]。
11月に開催された準々決勝では、上位進出が期待されていたミキ、EXIT、四千頭身らお笑い第七世代と目される人気グループの多くがことごとく敗退する事態となった[11]。EXITは12月1日にYouTubeへ「M-1準々決勝敗退の心境をノーカットでお送りします。」と題したトーク動画をアップしたが、その中で兼近大樹の「M-1の予選には自称お笑いファンが集まっている。その人たちが"意地でも笑わない"って顔で俺らのこと見てました」と敗退の原因を分析する発言に賛否が寄せられた[12]。一方で第14回優勝者霜降り明星の粗品は「第七世代なんか実力ないっすからね。出てこないすよね、『M-1』の決勝とか。」と単に第七世代に実力が無かった事が原因であると分析している[13]。
下馬評
お笑いナタリーでは昨年に引き続いてDJ KOO、川谷絵音、ぱいぱいでか美、北島康雄、鈴木淳史らお笑い好きタレントによる結果予想企画が実施された。優勝者についてはかなり評価が別れ、DJ KOOがおいでやすこが、川谷が東京ホテイソン、ぱいぱいでか美と鈴木がニューヨーク、北島が敗者復活戦から金属バットが勝ち上がると予想した。一方でウエストランドに対して5人全員が順位関係なく「爪痕を残しそう枠」に選出した。敗者復活戦に関しては川谷と北島が金属バット、DJ KOOが金属バットに加えてインディアンスとからし蓮根の3組を予想した。対してぱいぱいでか美はぺこぱ、鈴木はコウテイを選出した[14]。
日刊SPA!に掲載された2001年、2002年大会のファイナリストである元ハリガネロックのユウキロックによる準決勝レポートでは、金属バットの敗退に対し「コンプライアンス的に危なっかしい。敗退ではなく敗者復活戦へ送り込んだ」という見解が載せられた[15]。
日刊スポーツ東京本社のお笑い担当記者である小谷野俊哉は12月18日の記事で錦鯉が優勝すると予想。その背景には新型コロナウイルス流行の影響によってテレビやYouTubeの利用者が上手なお笑いを見慣れているという見解があり、その上でファイナリストの中で最も理屈なしに笑える芸風の錦鯉の台頭が予想された。加えて小谷野が個人で実施した準決勝の採点で最高得点を記録したマヂカルラブリーが錦鯉の対抗馬に、大穴として見取り図が選出された[16]。一方、昨年ミルクボーイの優勝を的中させた大阪日刊スポーツのお笑い担当記者である星名希実はアキナを本命、対抗に見取り図、大穴としてオズワルドを選出した[17]。
GYAO!の三連単人気ランキングでは、1位・ニューヨーク、2位・見取り図、3位・アキナで、優勝したマヂカルラブリーは9位、2位のおいでやすこがは6位だった。なお応募総数は45万6188人、うち的中者は160人だった。
視聴率
この番組が放送された2020年12月20日のプライムタイム帯は裏番組としてフジテレビ系列が2020年に社会現象を巻き起こした人気アニメ『鬼滅の刃〜柱合会議・蝶屋敷編〜』を放送するほか、既存の人気レギュラー番組として、NHK総合テレビが大河ドラマ『麒麟がくる』(20時台)、日本テレビ系列がバラエティ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』(19時台)・『世界の果てまでイッテQ!』(20時台)・『行列のできる法律相談所』(21時台)などがあるため、視聴率争いも注目されていた[18][19]。
テレビ番組の視聴率を計測しているビデオリサーチは2020年12月21日に20日に放送された各番組の世帯平均視聴率を発表し、本番組の視聴率は関東地区19.8%、関西地区29.6%、鬼滅の刃は関東地区14.4%、関西地区11.1%で東西共に本番組が勝利した[20]。なお、麒麟がくるは12.2%(関東地区)、日本テレビの3番組は視聴者層が本番組と鬼滅の刃に重なってしまったことが影響し、ザ!鉄腕!DASH!!が9.4%、世界の果てまでイッテQ!が8.9%、行列のできる法律相談所が7.1%(何れも関東地区)と全て1桁だった[21][22]。
マヂカルラブリーのネタに対する議論
上述の通り最終決戦においてマヂカルラブリーが披露したネタは正統派のしゃべくり漫才やコント漫才ではなく、「野田クリスタルがほぼ無言で舞台を動き回り、それに村上がツッコミを入れる」という異色のものであったことから、放送直後から「あのネタは漫才なのか」という漫才論争がネット上で発生している[23]。
流行歌を取り入れた漫才を得意とした上沼恵美子、コント漫才に軸を置いた松本人志(ダウンタウン)、礼二(中川家)、富澤たけし(サンドウィッチマン)、小ボケ量産型の漫談形式の漫才の塙宣之(ナイツ)など、今大会の審査員で掛け合いのしゃべくり漫才を主とした漫才師はオール巨人だけであった[24]。
このような論争が起きていることについて、コラムニストの木村隆志はその背景として「2019年の最終決戦が過去最高レベルと言われるほどに笑いを集めたのに対し、その反動とも言えるマイナスのギャップが発生した」「『M-1グランプリ』という番組・イベントが持つ凄みから、賛否両論の分母の大きさが他の番組の数倍あり、共通の話題として書き込まれやすい」「視聴者側からは批判対象を探し出し、誹謗中傷など個人攻撃できる心理が働いている」「ネットメディアがページビューを稼ぐためにそうした批判を集めて、記事化し、そこからさらに批判が増加する負のスパイラルに陥っている」という4つの点が挙げられると分析している[23]。
審査員のうち、富澤たけしは自身のブログで「マヂカルラブリーの、決勝の決勝でほぼ喋らずに転がってるネタをやる勇気は凄い。一歩間違えば大惨事になる可能性もあるネタ」とネタを賞賛した上で、「主催者側が漫才じゃないと判断したら失格にすればいいわけで、『点数をお願いします』と言われた以上、審査員は漫才として審査する。各審査員は自分の中の漫才の解釈の枠で点数や1番を決める。漫才は色んな形があっていいし、だからこそ新しい形が産まれ、進化していくんだと思う」と私見を述べている[25]。
富澤の相方である伊達みきおも自身のブログで「センターマイクに向かって舞台袖から出てきて『どうも』と始まれば、それは漫才。漫才と言うのは…みたいな、そんな難しいもんなんかない。おもしろければそれで良し」と持論を述べている[26]。
立川志らくは自身のTwitterで野田の動きについて「思わず喜劇と言ってしまった。漫才の戦いで喜劇に票を入れていいのかという葛藤があった」としながらも、「村上氏の喋りは漫才」であるという見解を示している[27]。
塙宣之は自身のラジオ番組で「野田君みたいなボケは1番憧れる。だけどああいうのっていろいろ言われたりとかでやらなくなる」とした上で、披露するネタの順番を直前になって変えたことも踏まえて「作戦勝ちだと思う。2本目のやつは点数化というのがこっちも怖い。たらればになるが絶対それで良かった」と評している[28]。
おぎやはぎは自身のラジオ番組で、論争について触れ、矢作兼は「みんな真面目だね」と述べ、小木博明も「プロの審査員が決めているんだから」と“論争”になること自体に疑問を呈した。また、矢作は「優勝したからこそ、論争になるわけじゃん?5位とかだったら論争にならない。マヂカルラブリーが時代を変えたな」と評した[29]。
一方でお笑い界でも松嶋尚美が「面白かったと思う」と絶賛した上で、「こういうコンテストに予選落ちしてたくらいのグループの私が言うんやけども、コントだと思う。スタンドマイクがあって、スタンドマイクを中心にやらないとピンマイクを主で使うようじゃやっぱり…」と述べた[30]。
審査員であるオール巨人は優勝決定後のコメントで「三者三様の漫才。喋り漫才、それからなんか自分の世界に出て行くっていう、そういう漫才で非常に楽しく見ましたけども、やっぱり僕は漫才師やから喋りを重点的に見てしまいました」と、漫才ではあるが、自分の好みには合わなかったという旨を発言した。
過去に2002年大会のギター片手に舞台を駆け回る音曲漫才のテツandトモに「お前らの来るところじゃない」と当時の審査員の立川談志が否定的であったり[注 3]、2008年大会のNONSTYLEがリップクリームを小道具として使用したことや2010年大会のジャルジャルのメタフィクションな漫才をコントだと言い松本人志が否定的であったりと審査員内にも漫才論争のようなものが起きている[24]。
松本人志は「漫才には基本的に定義はなく、敢えて定義を設ける事でその定義を裏切る事が漫才」「マヂカルラブリーの漫才は野球でいう消える魔球のようなもの」としている[31]。太田光(爆笑問題)も「漫才には型がない」としている[31]。
脚注
注釈
出典
- ^ “M-1グランプリ、コロナ禍での開催。漫才師たちに送った言葉「漫才は止まらない」の“真実””. テレ朝スポット. (2020年12月17日) 2021年12月1日閲覧。
- ^ “歴代王者がラジオでM-1ウラ実況、ミルク&霜降りインタビューやメッセあいはら予習番組も”. お笑いナタリー (ナターシャ). (2020年12月18日) 2020年12月19日閲覧。
- ^ “祇園がM-1敗者復活戦欠場、木崎太郎がコロナ感染”. SANSPO.COM(サンスポ) (産経デジタル). (2020年12月20日) 2021年12月1日閲覧。
- ^ “インディアンスが敗者復活「M-1グランプリ2020」”. お笑いナタリー (ナターシャ). (2020年12月20日) 2020年12月20日閲覧。
- ^ “マヂカルラブリーが「M-1グランプリ2020」優勝!第16代王者に”. お笑いナタリー (ナターシャ). (2020年12月20日) 2020年12月20日閲覧。
- ^ “おいでやすこが、マヂカルラブリー、見取り図「M-1」最終決戦に進出”. お笑いナタリー (ナターシャ). (2020年12月20日) 2020年12月20日閲覧。
- ^ “M-1グランプリ2020優勝はマヂカルラブリー!「最下位取っても優勝することはある」”. ENCOUNT (Creative2). (2020年12月20日) 2021年12月1日閲覧。
- ^ “M-1グランプリ2020”. M-1グランプリ 公式サイト. 2021年12月11日閲覧。
- ^ “おいでやすこが「出て損をする舞台なんてない」ピン同士のユニットがM-1決勝へ”. お笑いナタリー (ナターシャ). (2020年12月13日) 2021年11月28日閲覧。
- ^ “M-1ファイナリスト「おいでやすこが」はしごを外されたピン芸人2人の出来すぎストーリー”. Smart FLASH/スマフラ (光文社). (2020年12月18日) 2021年11月28日閲覧。
- ^ “『M-1』“第7世代”壊滅! 運営陣に「本気度が感じられる」と称賛の声”. まいじつ. (2020年11月23日) 2021年11月28日閲覧。
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- ^ 宇原翼 (2021年9月29日). “霜降り粗品「第七世代なんか実力ない」 野田クリスタル、ゆりやんとの「王のサミット」で語る”. 日刊サイゾー. サイゾー. 2021年11月28日閲覧。
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- ^ “M1本命は錦鯉、対抗マヂカルラブリー/記者予想1”. 日刊スポーツ (日刊スポーツニュース). (2020年12月18日) 2020年12月19日閲覧。
- ^ “今日M1!栄冠は錦鯉?アキナ?/記者予想まとめ”. 日刊スポーツ (日刊スポーツニュース). (2020年12月20日) 2020年12月20日閲覧。
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- ^ “『M-1』と『鬼滅の刃』が一騎打ち、視聴者獲得の仕掛けは?”. NEWSポストセブン (2020年12月20日). 2020年12月22日閲覧。
- ^ “M-1は関西29・6%、関東19・8% 東西で「鬼滅」に完勝”. デイリースポーツ (2020年12月21日). 2020年12月22日閲覧。
- ^ “「M―1グランプリ」19・8%!高水準視聴率争い 同時間帯「鬼滅の刃」14・4%を上回る”. スポーツニッポン (2020年12月21日). 2020年12月22日閲覧。
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