コンテンツにスキップ

筑後弁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Henlly3839 (会話 | 投稿記録) による 2021年12月25日 (土) 08:26個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (独自研究を除去。)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

筑後弁ちくごべん、ちっごべん)は、福岡県南部で話される日本語の方言

概要

一般的に筑後弁という場合、福岡県筑後地方全体の方言を総称する場合(筑後方言と同義)と、筑後地方北部の久留米市筑後市を中心とした地域で使われる方言(久留米弁)を指していう場合とがある。

ここでは後者の久留米弁について記述する。久留米弁は大牟田市で使われる大牟田弁とはイントネーションや単語などに違いがみられるが、佐賀県鳥栖市の方言とは良く似ている。

語彙

動詞

  • 「いさる」「ゆさる」=沈殿する
  • 「うてあう」=相手にする
  • 「うっちょく」=置いていく
  • 「えすがる」「えずがる」=怖がる
  • 「おごる」=叱る
  • 「おしょれる」=折れる
  • 「おせこせなる」=あれこれ忙しい
  • 「おっちゃくる」「おっちゃえる」「ちゃげる」「ちゃえる」=落ちる、落下する
  • 「おっちゃす」=落とす
  • 「おらす」=『居る』の丁寧語
  • 「おらぶ」=叫ぶ、大声を出す(「そげん、おらばんよ」=そんなに、大声を出すな)
  • 「かたる」=参加する
  • 「かたす」=参加させる(かたしてー!=さんかさせてー!)
  • 「がまだす」=精を出す
  • 「かまれる」=刺される(蚊にかまれた=蚊に刺された)
  • 「がめる」=盗む
  • 「からう」=背負う
  • 「がられる」「がらるる」=おこられる、どなられる
  • 「きびる」「くびる」=結ぶ
  • 「きる」=両替(「一万円札ば千円札にきってください」=一万円札を千円に両替してください )
  • 「ぐらり」=失望する、がっかりする
  • 「くらす」「くらする」「こっくらす」=(主に拳で)殴る、叩く「誰々にくらされる」
  • 「くる」=行く(「7時までには来るたい」は、7時までには行きます の意)
  • 「け」「けえ」=来い(命令)
  • 「けそけそする」=そわそわする、落ち着きが無い
  • 「ござる」=『来る』の丁寧語(ぼんさんの ござらっしゃった=お坊さんが お見えになった)
  • 「こずく」=咳をする
  • 「こっくずるっ」「こっぱげる」=壊れる
  • 「こっぱがす」=壊す
  • 「こちょぐる」=くすぐる
  • 「こわる」=筋肉痛になる
  • 「さかたんぶる」=上下がひっくり返る
  • 「されん」=出来ない
  • 「しこる」=繁る・茂る
  • 「じょうる」=おろす、さばく(魚、鶏など)
  • 「すたす」「すつる」「ほったする」=捨てる
  • 「すためる」=水を切る
  • 「せれ」=しろ(命令)
  • 「そうつく」「さるく」=うろうろ歩き回る
  • 「そぜる」「そでる」「そずる・る」=傷む・劣化する
  • 「ぞろびく」=(裾などを)ひきずる
  • 「たてがう」=ちょっかいを出す、からかう
  • 「たぎらかす」=沸かす、沸騰させる
  • 「たまがる」=びっくりする
  • 「ちんちろめする」=右往左往する、落ち着きなくアタフタする
  • 「つくじる」=からかう、ちょっかいを出す
  • 「つぐ」=(ご飯やおかずを)よそう、盛る
  • 「つっからかす」=突き刺す、刺し通す(貫通させるニュアンス)
  • 「つやつける」=かっこつける
  • 「つんくじる」=むしりとる、小さくちぎってバラバラにする
  • 「つんのていく」=ついて行く
  • 「つんばる」=爪先立ちをする
  • 「つんぶろて」=(体・衣類に付いた砂や泥などを)払い落として

    用例:つんぶろちからけ!=払い落としてから来い!

  • 「でやす」=しかる、たたく≒どやす
  • 「とごえる」「とごゆる」=数人でふざけて暴れる
  • 「とっかる」=手が届く
  • 「なおす」=しまう
  • 「なごなる」=横になる、寝る
  • 「なんかかる」=寄りかかる
  • 「にやがる」=ふざける、図にのる
  • 「ねぶる」=舐める
  • 「ねまる」=腐る
  • 「のうなる」=無くなる
  • 「のうなかす」=無くす
  • 「のこる・のこらかす」=挿す・ささる(貫通せずに埋まるニュアンス)
  • 「のごう」=拭く、ぬぐう(のごとって=拭いておいて)
  • 「はぐる」=めくる(『つ』がはぐれた = 『かさぶた』がめくれた)
  • 「はじく」=(主に掌・平手で)叩く、ひっぱたく
  • 「はっていく」=行ってしまう、いなくなる
  • 「はらかく」=腹を立てる
  • 「はわく」=掃く
  • 「ひく」=敷く
  • 「ぴっしゃぐる」「びっしゃげる」「びっちゃげる」=潰れて扁平になる
  • 「ふっとずる」「ふっとでる」=飛び出る
  • 「ふんしゃぐ」=踏みつぶす
  • 「ほうからかす」=放置する
  • 「ほうどる」=這っている (虫など)
  • 「ほがす」=穴をあける
  • 「ほげる」=穴があく(ズボンに穴んほげた = ズボンに穴があいた)
  • 「ほたくる」「ほったくる」=無造作に放置する
  • 「ほっちらかす」=散らかす
  • 「ぼてくりまわす」=ボコボコにする
  • 「まめる」=①まるめる、整える、スムーズにする(餅ばまめて=餅を丸くして)②和える、混ぜる
  • 「まりかぶる」「しかぶる」=漏らす
  • 「まる」=用を足す
  • 「みみる」=聞こえる (「みみらんばい」=聞こえないよ)
  • 「めっかる」=見ることができる、見つけることができる (「めっかったの?」=見ることができた?)
  • 「むぞがる」=かわいがる
  • 「よめる」=嫁ぐ

形容詞

  • 「うらめしか」「うらんしか」=きもちわるい
  • 「えすか」「えずか」=こわい、恐ろしい
  • 「えーらしか」=可愛らしい
  • 「おうちゃっか」=横着、姑息、卑怯
  • 「からか」=辛い、しょっぱい
  • 「きなか」=黄色い
  • 「げさっか」=みっともない
  • 「こすか」=セコい、ずるい
  • 「こちょばいか」=くすぐったい
  • 「こまか」=小さい、背が低い
  • 「こゆか」=濃い
  • 「こわか」=硬い
  • 「ざっとなか」=大変だ、骨が折れる
  • 「しかとんなか」=くだらない
  • 「しょんなか」=しょうがない
  • 「しるしか」=面倒くさい、かったるい、やる気が起きそうにない(雨んふっとるけんしるしか〜)
  • 「すいか」=すっぱい
  • 「すかん」=嫌い
  • 「せからしか」「しゃあしい」=邪魔くさい、うっとうしい、手間がかかってめんどくさい
  • 「とぜんなか」=寂しい
  • 「とつけんなか」=とんでもない、思いもしてない、意外な
  • 「ぬっか」=暖かい
  • 「ばさらか」=大量に
  • 「ひだるか」=ひもじい、腹が減った
  • 「ひゅーなか」=変な
  • 「ふとか」=大きい、でかい、背が高い
  • 「みたもんなか」=みっともない
  • 「むぞか」=かわいそう
  • 「やおなか」=大したものだ
  • 「よか」=良い、よろしい

副詞など

  • 「いっちょん」=全然、まったく、一つも
  • 「いっちご」=二度と、金輪際
  • 「えらい」=とても、沢山
  • 「がば」=とても、沢山
  • 「かつがつ」=片っ端から (かーつがつ食うてから!=片っ端から食いやがって!)
  • 「かんめなし」=何でもかんでもおかまいなしに
  • 「ぐすと」=とても、めいっぱい(ぐすと押さんの!=めいっぱい押しなさい!)
  • 「ごうほ」=とても大きい、とても太い
  • 「ごつ」「ごと」=みたいな、のようだ(石んごつ硬か=石のように硬い)
  • 「さっち」「しゃっち」=いつも、決まって、必ず
  • 「さでくり」=したたかに、派手に(さでくりころだ=派手に転んだ)

・し(せ)からし(たい) =腹が立つ

  • 「ぞーたん」=冗談
  • 「ぞうたんのごつ」=冗談じゃない!、全くもう!、とんでもない!
  • 「そーにゃ」=とても、そうとう(伸ばすほど、「とっっっっても」となる)
  • 「ばさらか」「ばさろ」=沢山、大量に
  • 「とーし」=ずっと
  • 「つんのうて」=連れ立って(つんのうて出かくるばい=連れ立って出かけます)
  • 「こけ」「そけ」「あすけ」「どけ」=ここ、そこ、あそこ、どこ
  • 「こげん」「そげん」「あげん」「どげん」=こんな、そんな、あんな、どんな
  • 「こっつぁん」「そっつぁん」「あっつぁん」「どっつぁん」=こっちに、そっちに、あっちに、どっちに
  • 「あて」「うち」=私:女性(「あてどん」「うちどん」=私たち)
  • 「おどん」=私:男性(「おっだん」「おどんどん」=俺たち)
  • 「すら」「すらごつ」「しらごつ」=嘘、虚言「〜つくな」
  • 「でけん」=駄目
  • 「むご」=上手に、うまく(むごでけた=じょうずにできた:むごとこしたのぉ=うまいことやったなぁ)
  • 「ねーごつ」=寝言・たわごと・無いこと
  • 「ばの!」=からな!※念押し (言うたばの!=言ったからな!)
  • 「ほんなこつ」=本当のこと、本当に
  • 「やっさと」=目の色を変えて、一生懸命に、次々に (やっさとがまださにゃ日の暮るっばい=目の色変えて頑張らないと日が暮れてしまうよ)
  • 「やん」=なければ※責務・義務を伴う時に

   言わやん=言わなければ  せやん=しなければ  聞いとかやん=聞いておかねば  見とかやん=見ておかねば etc.

  • 「ようら」=適当( いい加減な感じ )

名詞

  • 「いん」=犬
  • 「くもんえばり」=蜘蛛の巣(えばり単体ではあまり使われない)
  • 「おうかん」=一般道路
  • 「おしるし」=気持ち程度
  • 「かべちょろ」=トカゲ
  • 「ぎゅった」=輪ゴム
  • 「くちなわ」「ひらくち」=蛇
  • 「けちょくりん」=カイツブリ
  • 「こしょう」=唐辛子
  • 「こうじょ」=わがまま
  • 「すったく」=手抜き
  • 「すめ」=出汁、つゆ(うどんなどの出汁、そうめんなどはつゆ)
  • 「じご」=内臓、わた。主に虫や魚など比較的小さな生物に使用
  • 「じじ」=魚(幼児言葉)
  • 「じんじんがっこ」=肩車(幼児言葉)
  • 「たろがしんのげ」=どくだみ
  • 「たんがく」「たんがらびき」「びきたん」=雨蛙・疣蛙等の小さめの蛙
  • 「たんなか」=田んぼ
  • 「つ」=かさぶた
  • 「つし」=納谷、小屋
  • 「つっかけ」=底が薄く、かかとが殆ど無い履物全般(サンダル、ぞうり、スリッパ、雪駄など)
  • 「とんまめ」=そらまめ
  • 「ひして」=一日 ≒ 24時間(ひしてじゅう = 一日中)
  • 「ぶーちゃん」=お風呂・コップに注いだ水 または 白湯(幼児言葉)
  • 「べんた」「べんぷ」=ほっぺた ※べんぷは主にお尻のほっぺたを指す:「蚊に尻のべんぷば食われた」
  • 「ほいと」=世捨て人、浮浪者
  • 「むこどん」=婿
  • 「もー」=赤ちゃん用:四つん這いでお尻を上げた様
  • 「よーかれ」=怖がり、弱虫
  • 「よめご」=嫁

助詞・助動詞など

  • 「〜がた」「~がつ」「~がと」=〜の分(500円がた=500円分)
  • 「〜(ん)げ」=〜(の)家
  • 「〜げな」=〜だそうだ(伝聞)
  • 「〜けん」=〜から(危なかけん気をつけて=危ないから気をつけて)
  • 「〜ごたる」=① 〜みたい、〜のようだ

        ② 要望を柔らかくした表現 (ウチも見ろ(ぅ)ごたる=あたしも見たいなぁ)

  • 「〜さん」「~さね」=〜へ(久留米さん行ってくる=久留米へ行ってくる)
  • 「〜しきらん」=〜できない
  • 「~しこ・~しご」=~だけ(こがしこ・これしご=これだけ)例:どがしこせやんね?=どれだけすればいいの?
  • 「〜しとっと?」=〜しているの?
  • 「〜しなん」=〜でしょうがない、たまらない 例:暑しなん=暑くてしょうがない
  • 「〜しよらす」=〜している(主語は人、三人称単数・複数)
  • 「〜すうごつなか」=〜したくない
  • 「〜せやん」=〜をしなければならない
  • 「〜たい」=〜ね、〜よ(しょんなかたい=しょうがないね、私がするたい=私がするよ)
  • 「~ちや」=①~だって ②~のか:念を押す感じ(「や」はハッキリ発音。ニュアンスで①と②を使い分け)

       ①なんちや?=なんだって? ②見たちや?=(ほんとに)見たのか?

  • 「〜ちゃなか?」=〜ではないだろうか?(推定)
  • 「〜ちゃる」=①〜てあげる ②~なさる・おられる(①は一人称で使用する場合、②は三人称で使用する場合)

     ①しとっちゃる=やっといてあげる ②しよっちゃる(≒してござる≒しよらっしゃる≒しよらす)=しておられる)

  • 「~でん」「~どん」=~でも(めしどん食おうか=めしでも食おうか)
  • 「〜にゃ」=〜なければ、~なきゃ(○○しとかにゃ=○○しておかなければ、○○しておかなきゃ)
  • 「〜ばい」=〜よ(外は寒かばい=外は寒いよ)
  • 「~ばし、したか」=~なんか、していない:強い否定
  • 「〜やけん」=〜だから
  • 「(疑問)+ やん!」「(疑問)+ じゃん!」=ってば!※語意を強める働き(何ばしょっとかやん!=何やってるんだっての!)
  • 「〜んにき」=〜の近く、〜の周辺 (そこんにきばさるいてくる=そのあたりを散策してくる)あそこんにき(あの辺)ここんにき(この辺)

連語など

  • 「あったれんとこ」=思いもしない場所、変な所
  • 「おとんことんなか」=音沙汰ない
  • 「おめんなかった」=うっかりしていた
  • 「かたかた、かたちんば」=対になるべきものが揃っていない(例:靴下がかたかた)
  • 「かったりばんこ」=かわるがわる、こうだいごうたい
  • 「くちがまめらん」=ろれつが回らない
  • 「だけんね」「そいけんさい」=だからね(理解されていない時にさらに詳しい説明など)
  • 「~ばっするごつ」=~のはずはない(「〜ち、言うたばっするごつ」=〜と言ったななてはずはない)
  • 「げんしょんかな(ゎ)ん」=大変困り果てる、どうにもお手上げである
  • 「そうちのぅ」=そうなのね、そうなんだ
  • 「つれうしなう」=みんなとはぐれて迷子になる
  • 「てのだった」=手が疲れた
  • 「とつけなとけ」=とんでもないところに
  • 「どんこんいかん」=にっちもさっちもいかない
  • 「どんこんされん」=どうにもこにうもできない
  • 「どんこんこんこん」=どうにもこうにも
  • 「どげんだっちゃよか」「どげんでんよが」=どうでもいい
  • 「なんなか」=何もない
  • 「なんばしょっと?」=何をしているの?
  • 「にくじんごつ」=ひどく意地悪な様
  • 「餅がつうばる」=餅の表面がパリパリになる
  • 「やおいかん」=大変、一筋縄ではいかない
  • 「やらやらする」=①イガイガする(内傷的なもの:主に喉が悪い状態)

          ②ヒリヒリする(外傷的なもの:主に火傷などで爛れた時)

  • 「ようなか」=よくない
  • 「うんにゃ」=いいえ だめ

関連項目

脚注