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沖縄料理

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郷土料理の中でも、沖縄県に伝わる沖縄料理(または琉球料理)は、独自の食文化を発展させてきた。 食文化の違いの要因としては、日本の他の地域と異なる気候から、用いられる材料に違いがあったこと、明治以前には独立した王国であったなど歴史的土壌が異なっていたことなどが挙げられる。

現在、沖縄料理として一般に親しまれているものの源流は、宮廷料理の流れをくむ料理と、一般庶民の家庭で食べられていた料理とに大別される。琉球王国時代、宮廷では儀式や中国からの使節の饗応の必要から中国の影響を強く受けた豪壮華美な料理が発達した。一方、庶民の間では野草や自然の恵みを生かした素朴な味わいの料理が広まり、それらは薬膳・長寿食としても有効で、今日に至る長寿県沖縄の形成に貢献している。これらに加えて、沖縄そばなど明治以降に沖縄に伝わった料理も現在では広く沖縄料理として認識されているほか、ポークランチョンミートタコライスといった、戦後アメリカの影響で普及した料理も、新しい沖縄料理として独自の食文化の一翼を担っている。

豚肉料理

沖縄料理の主眼とされるのは、豚肉を利用した料理である。中華料理同様に、沖縄料理ではブタを利用した料理が特に発達しており、一頭の豚を文字通り頭から足先まで料理に使用する。中でも有名なのは豚の角煮であるラフテーやあばら骨の部分を煮込んだソーキであるが、耳の部分を切り取り、毛を剃ってその軟骨部分をクラゲのように食するミミガーや、同様に頭の皮を利用したチラガーなども有名である。基本的に、豚肉を料理する際にはよく煮込んでから用いる。このため、余分な脂肪が抜け出て健康的な料理になると言われている。例えば、豚足の部分を、毛を処理してから醤油みりんでじっくりと煮込んだティビチ(テビチ)は、脂分が抜け出てコラーゲンが豊富に残留しているため、肌の美容に良いとされている。また、内臓は中身と呼ばれ、イリチーと呼ばれる炒め煮にされるほか、様々な内臓をコンニャクコンブとともに入れた中身汁と呼ばれる吸い物などがよく食されている。豚肉のかたまりを塩漬けにしたスーチカーが保存食とされ、血液も固まりの状態をイリチーにしたチーイリチーとして食すなど、沖縄における豚肉料理のバリエーションは非常に多彩である。

山羊料理

沖縄の肉料理にあっては、ヒージャー(ヤギ)も特筆すべき動物である。沖縄には山羊料理の専門店が存在するほか、祝い事の際などに振る舞われることが多く、現在でも農家では「自家用」にヤギを買っている家庭が多く存在する。乳は飲まず、主な料理法は生の刺身と汁物であるが、いずれもくさみが非常に強く、ショウガやフーチバー(ヨモギ)でくさみを消して食する。山羊料理は沖縄では滋養強壮に良いともされており、ヒージャーグスイ(「グスイ」は「薬」の意)という言葉も存在する。

野菜料理

沖縄の野菜料理といえばチャンプルーが真っ先に挙げられる。沖縄独特の固い豆腐を中心にした炒め物であるが、そこに使われる野菜は一般的なキャベツニンジンモヤシなどの他にゴーヤーパパイヤなど独特のものも存在する。ナーベラー(ヘチマ)を食用にするのも沖縄独特のもので、青い時期に収穫し、豆腐などとともに味噌煮にするナーベラーンブシーなどの料理がある。ジューシーはフーチバーなどの野草や野菜、ヒジキなどを米と一緒に炊き込む料理で、雑炊状のものと炊き込みご飯状のものとがあり、後者を特に区別してボロボロジューシーと呼ぶこともある。他に、シブイ(トウガン)は牛肉とともに汁物にされるなど、野菜料理においても沖縄独自の食べ方が多い。

海産物料理

沖縄周辺で捕れる魚の中には、グルクン(タカサゴ)など独特の魚も少なくない。魚料理のバリエーションは多くはなく、例えばグルクンは唐揚げにして食べるのが一般的であるが、素材の風味を生かして塩だけで煮込んだマース煮(「マース」は「塩」の意)などの料理も存在する。また、イラブー(エラブウミヘビ)を煮込んで汁物にしたものや、イカを墨ごと汁物にしたイカの墨汁(すみじる)なども、沖縄独特のものである。魚の加工食品としては、スク(アイゴの稚魚)を塩漬けにしたスクガラスや、沖縄風薩摩揚げチギアギ(これを「カマボコ」と呼ぶこともある)などがある。

海草を用いた料理も盛んで、スヌイ(モズク)は酢の物にし、アーサ(アオサ)は味噌汁に入れるほか、いずれも天ぷらの具にしたりする。また、海ブドウも沖縄独特のものとして、土産物などとして珍重されている。また、コンブを利用した料理が盛んで、だしに使うほか、締め昆布を煮物や炒め物に用いたり、千切りにしてクーブイリチーと呼ばれるイリチーになどにする。沖縄県のコンブの消費量は全国でも一、二を争う。沖縄で昆布が生産されないのに消費量が多いのは、江戸時代、日本と中国との交易の中継点として沖縄が利用されていた頃、日本から中国への輸出品として沖縄に運ばれたコンブが用いられるようになったからだとされている。

沖縄そば

沖縄そば(方言風に「すば」とも)は、明治以降に中国人が沖縄に伝えたとされ、沖縄では「そば屋」と言ったら沖縄そば屋を指すほどポピュラーなものになっている。麺は小麦粉を中心にしてそば粉を用いず、中華麺に近いもので、これをブタやカツオ、コンブのだしで取ったスープで食べる。具はチギアギや小口ネギなどであるが、ソーキを醤油とみりんで味付けしたものを乗せるソーキそばも最近では定着している。また、宮古諸島八重山諸島のそばはそれぞれ違いがあり、「宮古そば」「八重山そば」として親しまれている。

アメリカの影響

戦後、アメリカの軍政下におかれた沖縄では、食文化においてもアメリカの影響を受けるようになった。まず、戦争直後の食糧不足の状況下で米軍の軍用食料から供出された豚肉の缶詰、ポークランチョンミートが一般に普及し、現在でもスパムをはじめ、輸入物だけではなく県産品も製造されるなど、大量に消費されるようになった。ハンバーガーやピザといったアメリカ風の料理も早くから普及し、1963年にはハンバーガーチェーン店のA&Wが進出した。これは、マクドナルドの日本進出より8年早い。こういったアメリカ文化の影響は、それまでの食生活に少なからず影響を与え、既存の料理と融合したタコライスやポークたまごといった新しい料理を生み出した。