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在日認定

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在日認定(ざいにちにんてい)は、ある特定の人物を、事実や根拠の有無にかかわらず「在日韓国・朝鮮人や韓国・朝鮮系の人物である」と断定する行為。

概要

近年におきた日本のネットなどで自らの主張と相反する親韓・親北・反日と見なした人物、犯罪者など、それらの人物を在日韓国・朝鮮人であるとする侮蔑的な認定への意味がある。主にまとめサイト2ちゃんねるのネット上で流通する事が多い。

事例

日本国内における在日認定

主に日本では反自民党主張を行なう人物や日本の犯罪者に対する、在日認定などがあり「在日認定」の例として、WiLLに掲載された花岡信昭執筆の土井たか子を在日朝鮮人であるとした記事や、2010年1月25日付の國民新聞に掲載された清水馨八郎による小沢一郎菅直人土井たか子福島瑞穂を在日認定する記事がある(WiLLは土井から提訴され賠償を命じられた。詳しくは後述)。

石原慎太郎が2010年4月17日の永住外国人への地方選挙権付与などに反対する集会において「与党の幹部に帰化した子孫が多い」主旨の発言をした。福島瑞穂はこれを自身への発言と捉え、同4月19日の記者会見において否定し、名誉毀損だと反論した[1]

桑田佳祐は、一部の楽曲やパフォーマンスが原因で在日認定をされたことがある[2]。詳しくは桑田佳祐#思想・哲学あなただけを 〜Summer Heartbreak〜#収録曲を参照。実際の桑田は自身が純粋な日本人である事を公言しており、日本の文化日章旗・国歌「君が代」を肯定する考えがある事も明かしている[3][4][5][6]。また、2021年には桑田の著書『ポップス歌手の耐えられない軽さ』の原由子によるあとがき『女房の日記』の中で正確な出自が記載されている[7]

政治家の河野太郎は、Twitterにて、在日認定された事がある。これに対し河野太郎は、デマを流した発信者を場合によっては法的処置を検討する可能性があると発言した[8]

在日認定に対する罰則

ある特定の人物の氏名や出身地について事実と異なる情報を公に喧伝する行為は、仮にそれが価値中立的なものであるとしても、日本の場合は当該人物の名誉感情や人格的利益の侵害にあたるとされ、民法709条に基づく損害賠償責任を免れない。この点についてのリーディングケースとなったのが2006年に起きた土井たか子衆議院議員に対する在日認定を巡る民事訴訟である。

訴訟の原因となったのは、元産経新聞編集部長の花岡信昭が論壇誌WiLL2006年5月号に寄稿した「拉致実行犯辛光洙釈放を嘆願した“社民党名誉党首”」と題する記事である。記事の中で花岡は「土井たか子は朝鮮半島出身で本名は『李高順』である」と土井に対する在日認定を行った上で、「そのことが土井の拉致事件を見る目を曇らせたのか、すべて知った上で政治的演技をしていたのか」と論じ、祖国・北朝鮮の利益を図るために日本の利益を蔑ろにしたのだと土井を婉曲的に糾弾した。

戸籍謄本および改製原戸籍謄本の記載によると土井は日本人夫婦の次女として兵庫県神戸市に生まれており、花岡による在日認定は事実に反していた。また花岡は土井に対する取材等の裏付けを全く行わず、インターネット上で流布されていた情報のみに基づいて在日認定を行っていた。これに対して土井は記事によって名誉感情や信用を含む人格的権利を侵害されたとして、2007年4月18日、WiLLを出版するワック・マガジンズと同社代表取締役(当時)の花田紀凱、記事を執筆した花岡の三者を相手取り、1000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める民事訴訟を起こした。

神戸地裁尼崎支部は2008年11月13日、記事はあたかも土井が朝鮮人であるがゆえに日本以外の本国の利益を優先して、日本国民の安全などの利益を蔑ろにするという日本の政治家としてあるまじき行為をしていたかのような印象を与えるものであり、土井の社会的評価を低下させたとして名誉権の侵害を、また虚偽の在日認定について以下のように述べて名誉感情および人格的利益の侵害をそれぞれ認め、被告らに対して200万円の賠償を命じた。謝罪広告については記事の影響力の小ささを理由に退けた[9][10]

…また、氏名は、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容として構成するものというべきであることや、人は、自己の氏名や出身地を人格の重要な構成要素として捉え、これらに強い愛着を抱くことが自然であること(原告が自己の氏名や出身地に強い愛着を持っていることは弁論の全趣旨から明らかである。)などによれば、本件記載が氏名や出身地について価値中立的な事実を摘示するものであるとしても、明らかに虚偽の事実を記述するものである以上、本件記載は原告の名誉感情や人格的利益を侵害するものということができる。

被告らは判決を不服として大阪高裁控訴したが棄却され、さらに最高裁上告したものの、2009年9月29日上告を退ける決定が下された。これにより神戸地裁の判決が確定した[11]


脚注

  1. ^ 2011年4月30日朝日新聞
  2. ^ <布帳馬車>LOVE KOREA在日本大韓民国民団 2016年9月28日配信 2021年2月8日閲覧。
  3. ^ 『週刊文春』2014年9月18日号でのインタビュー特集(p17)
  4. ^ 桑田佳祐 – 涙をぶっとばせ!!(Full ver.) 2:15 - 2:17を参照。 2020年5月5日配信 2020年12月9日閲覧 youtube
  5. ^ ぴあDay(1984年)1984年7月の「ぴあ」 2019年7月5日配信 2020年12月8日閲覧 ぴあDAY
  6. ^ シークレットライブ '99 SAS 事件簿 in 歌舞伎町 SOUTHERN ALL STARS OFFICIAL SITE
  7. ^ 桑田佳祐『ポップス歌手の耐えられない軽さ』文藝春秋、2021年。 427 - 428項。
  8. ^ 河野太郎議員、「在日認定」ツイートに激怒 発信者に「法的措置も検討します」”. J-CAST ニュース (2013年4月10日). 2021年9月15日閲覧。
  9. ^ 神戸地方裁判所尼崎支部平成19年(ワ)第540号、平成20年11月13日民事第二部判決
  10. ^ “土井たか子氏名誉棄損で賠償命令 神戸地裁”. 共同通信社. 47NEWS. (2008年11月13日). オリジナルの2009年8月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090817054503/http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008111301000881.html 2014年4月1日閲覧。 
  11. ^ “土井元議長の勝訴確定 月刊誌WiLLで名誉棄損”. 共同通信社. 47NEWS. (2009年9月29日). オリジナルの2009年10月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20091003012721/http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009092901000840.html 2017年2月21日閲覧。 

関連文献

関連項目

外部リンク