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リアルロボット

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リアルロボットReal robot)は、アニメゲームに登場する架空の兵器、産業機械としてのロボットの分類のひとつで、軍や企業に所属する軍事的兵器もしくは人型の産業機械ともいうべき意味合いを持つ大型ロボットの呼称。

作品内での一般的に使用される類別呼称としては任天堂の家庭用ゲーム機「スーパーファミコン」用ソフトでリリースされた『スーパーロボット大戦シリーズ』で初めて恒常的に登場したものである。本作品において、上記のような意味合いを持つロボットは「リアルロボット」と呼称され、一方で「マジンガーZ」などのヒーロー的ロボットは「スーパーロボット」と呼称される。(但し、リアルロボットという語自体は、それ以前においてもアニメ雑誌等でガンダム以降の一連のサンライズ制作作品などに「リアルロボット路線」といった比喩的、形容詞的言葉を使用しており、言葉自体は必ずしもこのゲームが初出ではない)

すなわち、近未来における現実味を帯びた設定に基づく、主に軍用のロボット兵器、もしくはそれらが描かれる物語世界において、官民問わず恒常的に使用されているような世界観設定に基づくロボットの事を指す。

ただし、例えばアメリカ軍で研究されている「ロボット兵器」とリアルロボットとは似て異なることに注意が必要である。ロボットという語自体の定義の不確かさもあってしばしば混同されるが、前者は現状では「形態や移動手段を問わず、無人で移動・戦闘を行う兵器」が求められるのに対して、本稿で扱う後者は「有人・無人を問わず、原則として人間型もしくは生物型に準ずる形態をとる大型兵器」であることが求められている。

リアルロボットの起源

リアルロボットの概念の先駆けとなった作品は、富野喜幸 (現・富野由悠季)監督の「機動戦士ガンダム」とされている。呼称の命名自体は、そのポストガンダムと謳われた「太陽の牙ダグラム」の監督を担当し、次作「装甲騎兵ボトムズ」の監督において、リアル系の頂点を極めたとされる高橋良輔である。

「ガンダム」において初めて取り入れられ、リアルロボットという概念をその後確立させた要因として、

  • ロボットが「モビルスーツ」という独特の種別呼称を持つ、国家の製造する兵器を含む産業機械として設定されている。
  • 「量産型」「試作品」「不良品」「消耗部品の交換」といったような、商業的製造プロセス、産業概念がロボットアニメ史上、初めて登場する。

この二点の設定、概念が、それまでのロボット設定と決定的に違うといえる。

それまでの戦闘アクションを題材にしたアニメにおいて、このような多数の量産型兵器や国家間の戦争を描いたSFアニメでリアルかつ革新的なメカニック設定を行ったものとしては「宇宙戦艦ヤマト」が有名であるが、この宇宙戦艦ヤマトの世界観設定でもわかるとおり、いわゆる主役メカはその物語や人間像をバックアップする素材にすぎない。リアルロボットアニメもいわゆるこの宇宙戦艦ヤマト的なメカニック設定の流れを汲んでおり、それまでのスーパーロボットもの作品のような「主役メカ=主人公そのもの(もしくは主人公以上の物)」というものではなく、あくまでその物語世界での象徴的な大道具小道具にすぎないという、通常のドラマなどではいたって当たり前の手法をロボット物に導入した結果、革新的な手法に繋がり、その後のリアルロボット作品の流れが出来上がったという側面も持っている。

リアルロボットの展開

テレビアニメ『機動戦士ガンダム』は劇中に登場するロボットを兵器として扱ったことで、その戦場風景をロボットを用い再現したいという欲求が視聴者に生まれることとなる。それに答える形で放送中は発売されることのなかったロボットのプラモデルキットが放送終了後に発売され、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)ブームが巻き起こる。それに伴いプラモデルメーカーがスポンサーとなり度重なる再放送とともに映画版が制作されるに至り、ブームは頂点に達した。 これによってもたらされたアニメブームの中、リアルロボットという概念をさらに進化させ、リアリティを求めて様々な設定・工夫が凝らされた、子供以上の年齢層を対象にした軍事色の濃いロボット作品群が制作され、リアルロボットは一大ブームとなる。

最盛期

機動戦士ガンダムのヒット以降、数々のリアルロボット作品が制作されることになるが、上記で定義した事由、特にその後のリアルロボット作品の象徴的なキーワードにもなる「量産型ロボットVS量産型ロボット」「ロボット兵器を使った組織的戦争、紛争」というそれまでになかった構図を前面に推しだした作品が圧倒的に増えることになり、最盛期には完全にそれまでのロボットアニメの設定が一変した状況になっていた。そのような中、様々な設定や工夫が凝らされた作品が多数登場したが、その後のリアルロボット作品の、特にメカニックデザインと戦闘演出面において多大な影響を与える事になる画期的な手法を持つ作品が登場する。それが『超時空要塞マクロス』である。

超時空要塞マクロス』においては「バトロイド」と「デストロイド」という二種類のロボットが登場する。バトロイドは放映当時アメリカ海軍の最新鋭戦闘機であるF-14に似た戦闘機バルキリーがロボットに変形した形態であり、革新的なアイデアを実現しつつ洗練されたデザインを持つ。デストロイドは戦車などの地上兵器を発展させたデザインの兵器として、砲撃型や格闘型など目的別に制作された多様なものが登場する。またこれらが人型を採る理由としては、敵となる異星人が身長10mを超える巨人であるからとされている。『マクロス』のメカニック描写はアメリカでもヒットし、特にデストロイドはアメリカ製のゲーム『バトルテック』に登場する「メック」等に多大な影響を与えた。本作品をきっかけにいわゆる日本のリアルロボットアニメ的なメカニックデザインを表現するmecha(メカen:Mecha)という和製英語が米国でも広く広まることになる。(メック:Mechの語源は、このメカからきている。日本の場合は上記理由もあり、このようなロボットは「リアルロボット」「スーパーロボット」と分別される傾向にあるが、欧米では、スーパーロボットはスーパーロボットと呼称されるようではるが、日本アニメ的なリアルロボットデザインは一般的に総じてmechaと呼称し、分類される傾向にある)  

ドラマ性とリアリティの追求

『マクロス』に先立ち制作された『太陽の牙ダグラム』には、コンバットアーマーと呼ばれる人型兵器以上に植民惑星の独立戦争を描く人間ドラマとしての側面が強調されていた。しかしながら物語前半は兵器そのものとしてのロボットは描写の中心ではなく、ドラマ前半は大局的な戦術や政治、人間群像に赴きをおいた結果、ロボット兵器の存在をあまりに一般背景描写化、大道具化しすぎてしまったために、とてもその時流のメカニックアクションを売りにする作品とは言えない側面が目立ってしまった。そういう点もあってか、物語後半はそれまでのロボット兵器の描写の少なさを取戻すかのごとく怒涛の新型コンバットアーマーの登場や、戦闘演出、メカニック描写がほとんど毎話行われるようなものになっていた。

ドラマ性では申し分ないものの、リアルロボット自体が作品世界から疎外されかかった感のあった『ダグラム』の反省に基づき制作された『装甲騎兵ボトムズ』のアーマードトルーパーは、『ダグラム』の政治性を保ちつつ、主人公を本格的な職業軍人とし、その目線で物語を紡ぐことで、その搭乗機は兵器としての魅力を存分に発揮した。全高が4mにも満たないサイズが紡ぎだす現実感。機能美と視覚効果に満ち溢れた動作ギミック。また主人公がこれを次々と乗り捨て乗り換えていくことで「量産兵器」としての側面を徹底して強調していた。『ガンダム』によって提示された「ロボット=兵器」という概念は、兵器のキャラクター性を廃し、作品世界に本格的に軍事を持ち込んだ『ボトムズ』によって頂点に達したと言える。

重戦機エルガイム』ではムーバルフレームという内骨格構造によってロボットの構造やデザインを根本的に見直したヘビーメタルは、『機動戦士Ζガンダム』におけるムーバブルフレーム採用の第二世代モビルスーツなど、それ以降のリアルロボットのデザインに多大な影響を与えているとの評価もある。確かに設定面でのリアリティさは向上したものの、劇中での兵器として演出は『ガンダム』よりも後退しているという評価も同時にある。ある意味この風潮が後のエヴァンゲリオンにみられるようなリアルロボット的な設定を持つスーパーロボット作品(またはその逆)登場の予兆であったという見方もできる。

機動警察パトレイバー』では、上記のようなそれまでの世界観設定とはまったく違うアプローチにより、現在においても異彩を放つ後にも例を見ない特徴的な「リアリティ」をもった作品として著名である。内容としては、現実の日本の延長線上にある世界(というよりも内包する世界観は現代そのもの)に作業用ロボットレイバーを出現させこれによる社会への影響を描き、その作品の主人公らがそのレイバーを使用して犯罪に立ち向かう警視庁管轄下の特殊な機動隊という設定である。本作品は上記ボトムズのような完全な想像世界のリアリティとは別方向からアプローチした別の設定的な究極のリアリティさを内包しており、ドラマとしても非常に優秀なものであった。逆にいえばこれと同様の設定をおこなって別の作品を作ることは、純粋にこの作品を物まねすることにしかならないというある種のスタンドアローンな設定なため、同様の設定の作品というものも登場していない。

ブームの終息

機動戦士ガンダムより続いたリアルロボットブームは、1987年の『機甲戦記ドラグナー』の終了をもって一応の終息を迎えることになる。これは、この作品をもってリアルロボットアニメをリアルタイムで視聴した世代とそうでない世代の嗜好性の分岐点が重なったことにあると言われている。その後も1990年代に入り、リアルロボットアニメは多少なりとも製作されたが、ブームに到るほどの作品は登場しなかった(ガンダムシリーズ等の人気リアルロボットアニメの続編等を除く)その後、リアルロボット作品で培われた「設定のリアリティ」という方向性はスーパーロボット系のアニメに継承されることになり、「リアルロボット的スーパーロボット」ないしは「スーパーロボット的リアルロボット」とでもいうべき現在に到る新世代のロボット作品群へと移行していくことになる。一般的にそういった本格的な新世代ロボットアニメ作品の金字塔といわれているものが、一時期社会現象とまでいわれた「新世紀エヴァンゲリオン」と考えられている。

ビデオゲームへのブームの移行

商用映像作品としては一応ブームの終息の感があったリアルロボットではあったが、スーパーファミコン等の当時の高性能テレビゲームの登場、特に3次元コンピュータグラフィックスを実用レベルで実現したプレイステーションなどの登場によって、リアルロボットのリアリティさの設定が、シミュレーション技術で仮想的に実現可能となり、主にテレビゲームの世界でそのブームの復活を迎えることになる。リアルロボットは、その作品設定に多方面のリアリティを求められ、そしてそれまでの商用映像作品で培われたデザイン性も相まって見栄えも非常に良いため、SF系ゲーム作品の素材としては主役脇役にかかわらずうってつけであったわけである。それらを踏まえたゲーム界でのリアルロボット人気の先駆けとなった作品として、現在ではTVゲーム界のリアルロボット作品の真骨頂とまでいわれる『フロントミッション』など、それに追随したリアルロボットが戦場で活動するシミュレーションゲームも多数製作されている。そしてゲーム製作技術の向上に伴い、実際にロボットを操縦するアクションゲームあるいはシミュレーターが多数製作されるようになった。例えば『アーマード・コア』では、同名のロボットをプレイヤー自身が多種多様なパーツを組み合わせて作り操縦することが出来る。『鉄騎』は操縦席そのものの巨大な専用コントローラによって二足歩行戦車バーティカルタンクを操縦するのが特徴である。このような、搭乗者が自らパーツを用いてカスタマイズする顔のない二足歩行戦車の量産兵器というミリタリーイメージは、「バトリング」と称し、以上のようなリアルロボットの運用、整備、格闘を先駆的に描いていた『ボトムズ』へのリスペクトであると、『フロントミッション』『鉄騎』の各プロデューサーは述べている。そのような中、「スーパーロボット大戦シリーズ」は過去、そして現在までのジャンルを超えたロボットアニメ作品を回想するきっかけとなり、ロボット物シミュレーションゲームでは絶大な人気と地位を確立している。そのような製作者達の努力もあり、現在では、リアルロボットというジャンルは、ブームを昇華し、テレビゲーム作品の一ジャンルとして完全に定着したといえる。

リアルロボットの設定付け

兵器の一種としてこれらのようなロボットを登場させるにあたって大きな問題点となるのが、「なぜ人型の有人兵器でなければならないのか」という事である。既存の兵器、例えば戦車攻撃機から見れば、巨大な的が文字通り突っ立っているも同然である。身長が10mを超えるぐらいにもなれば歩くだけでも一苦労であろうし、可動部分が既存の兵器と比べて桁違いに多い事を考えれば製造・整備などに費やすライフサイクルコストも桁違いに多いものとなるだろう。ロボットを「人間の代わりに行動するもの」と考えるならば、有人ロボットと言う時点で言葉が矛盾を起こしてしまう。

そこでこういった作品の制作者達は、それらの世界の中に人型の有人兵器を登場させその存在に意義と説得力とを持たせるために、様々な工夫を凝らしてきた。例えばガンダムシリーズのうち宇宙世紀に属する作品においては、架空の物質であるミノフスキー粒子によって既存の兵器(およびその延長線上に存在しうる兵器)が能力を発揮できない状況を作り出した。さらに(『機動戦士ガンダム』放映後の後付ではあるが)ミノフスキー粒子を応用した様々な技術を設定し、また宇宙空間での姿勢制御技術としてAMBACを設定。これらを利用してモビルスーツという概念を成立させ、その世界観に説得力を与えたのである。

また、当時のリアルロボットでは、『機動戦士ガンダム』で設定された全高18メートル~20メートル前後の大きさが主流であったが、この大きさの根拠は、米軍の所有する現用戦闘機であるF-14戦闘機の全長(19.1メートル)を基準にして設定されたためである。すなわち我々の知る当時最強と言われ、ハイテク技術の結晶でもある現用航空兵器の大きさを、兵器としてのロボットに流用することで現実味を持たせたわけであり、まったくの架空の根拠のない設定値というわけでもない。このような設定にもスーパーロボットとは違うリアルロボットが故の設定の工夫を見ることが出来る。ただし単にマジンガーZと同じ「単純に成人の10倍」という説もある。またその後作られたリアルロボット作品には、ロボットの全高が10mを下回るようなものも多く見られる。

もっとも、特に主人公の乗る機体について、あくまで人間型をしていること--すなわち胴体から明確に分かれた頭部・一対の腕部・一対の脚部を有し、腕部には五本指の手を備えているというメカニカルデザインフォーマットは、スーパーロボット同様に厳守されている。『ガンダム』のザクジムといった「雑魚」でさえ上記のフォーマットを厳格に守っている。

テレビアニメ作品の場合、リアルロボットといえども低年齢層が視聴することも考慮されてヒーローらしさ(敵勢力のロボットならば、悪役らしさ)を強調したデザインが行われる傾向がある。ゲーム作品の場合には高年齢層をターゲットとするためかより兵器らしさを強調する傾向がある。

「ロボット」という呼称と、兵器ロボットとしての呼称

第一次世界大戦時、初めて戦争に投入された「戦車」という兵器の最初の呼称は「ランドバトルシップ(陸上戦艦)」というものであった。後に、戦車開発を秘匿するために使われた給水タンク車からその俗称をとって「タンク」という呼称が一般的となる。

この「タンク」という呼称についてもおおよそ「戦車」の用途とはかけ離れた言葉である。このように、機械にはどのような呼称が付くかは、その機械の開発された経緯などにより大きく左右される。

こういった史実もあったわけであり、機動戦士ガンダムにおける「モビルスーツ」という呼称や、そのアイディアの元となったといわれる「宇宙の戦士」(ロバート・A・ハインライン著)に登場する「パワードスーツ」といった呼称は、架空の世界を物語る上において、いかに画期的だったかといえよう。

実際、リアルロボットアニメにおけるそのほとんどの作品において、登場人物はそれらロボット兵器を「ロボット」と呼称することはごくまれである。必ずと言ってよいほど、その設定された上記のような呼称で呼ばれる。

特に日本においては、このような呼称群を持つアニメ作品とそのブームの影響により、「ロボット」という語がカレル・チャペックが定義した意味合いとインパクトが変異しつつあるのも事実である。例えば、筑波大学大学院システム情報工学研究科 山海嘉之教授の開発した「ロボットスーツ」は、上記パワードスーツと基本概念は同じ物であり、「ロボットスーツ」という語の登場以前は「パワードスーツ」という語で既に認知されていた。従って、今後のリアルロボット的な物語作品が制作される際、ますますこの「ロボット」という語自体が変異し、希薄になっていく物と予想され、今後のこれら作品群におけるリアルロボットの扱いに注目する必要がある。


リアルロボット作品の主なクリエイター

関連項目