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ヨウサイ

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ヨウサイ
ヨウサイ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナス目 Solanales
: ヒルガオ科 Convolvulaceae
: サツマイモ属 Ipomoea
: ヨウサイ I. aquatica
学名
Ipomoea aquatica
Forsskal.
和名

ヨウサイ(蕹菜)
英名
Water Morning Glory
water spinach
kang kong

ヨウサイ(蕹菜 拼音: wèng cài ウォンツァイ)、学名: Ipomoea aquatica)は、ヒルガオ科サツマイモ属野菜空心菜(くうしんさい)の呼称で知られる。

名称

別名が多く、茎が空洞のためクウシンサイ(空芯菜)ともよばれ、またエンサイ(莚菜)などの別名がある[1]

  • クウシンサイ:茎が空洞になっており、このため、台湾の中国語では空心菜(コンシンツァイ、拼音: kōng xīn cài)と書き、日本語でもこの呼称が「くうしんさい」の読み方で普及している。なお、同じ読みで「心」を「芯」に変えた、「空芯菜」という登録商標が日本で取得されている[2]
  • アサガオナ:朝顔菜
  • エンサイ:は台湾語の蓊菜の訛り。「エンサイ」「莚菜」が野菜・料理・飲料の名称として商標登録[3][4]。「莚」は草むしろを意味する漢字で本来、本種の意味はない。別名エン「蓊」の音を表すための代用当て字とみられる。
  • ムシロナ
  • ウンチェー沖縄ではウンチェー(蕹菜)、ウンチェーバー(蕹菜葉)と呼ばれる。
  • チャウカンツォイ中華人民共和国広東省では俗に食べ過ぎると痙攣を起こすともいわれ、広東語で抽筋菜(チャウカンツォイ、chau1gan1choi3)の俗称がある。
  • トンツァイ:中国の福建省では通菜(トンツァイ、拼音: tōng cài)とも呼ばれる。

特徴

ヨウサイ
水上のヨウサイ農地

つる性多年草だが、作物としては一年草扱い。東南アジア原産で、高温多湿の熱帯、湿地で多く栽培され、水耕栽培も可能。外見はサツマイモに似ており、茎は中空で這う。葉は切れ目の入った長卵形。アサガオのような淡紫色または白色の花を付けるため、朝顔菜(あさがおな)の別名もある。最低気温が10度を下回ると、茎も根も枯れる。

水辺に生育し、水面に茎(空洞で節がありフロートと同じ)を浮かせて進出する。汽水域でも成長可能である。暑さに強く水上で栽培すると大量に根を伸ばして水をよく吸収することから、近年では湖沼などの水質浄化活動によく用いられている[5][6]

日本には古くは沖縄県方面を経て九州に渡来した。真夏でも収穫でき、時期的に希少な葉野菜となる。九州以北の露地栽培では花をつけても種をほぼつけず、自生繁殖による生態系への影響は低い。

利用

食用

ヨウサイの炒め物

β-カロテンが豊富な緑黄色野菜で、は6 - 8月とされ、風味は個性的で少しクセがある[1]。茎葉を主に炒め物、または中華風のおひたし (タン[燙]青菜) として、中国台湾フィリピンベトナムタイマレーシアインドネシアなどの東南アジアで用いる。茎が空洞で火の通りも早く、シャキシャキした歯ごたえが炒め物に向いており[1]ニンニクと一緒にで炒めたり、魚醤の類や豆豉で味付けして炒めたりすることが多い。調味料シュリンプペーストオイスターソースナンプラーなども使われる[1]

オーストラリアの先住民族アボリジニの間ではブッシュ・タッカーとして古くから消費されてきた。

日本でも、沖縄県で従来より栽培されていたほか、九州地方などの温暖な地域で栽培が広がりつつあり、栽培農家も増えている。消費者が入手または栽培するのも容易になりつつある。エスニック料理店や中華料理店で高級食材のメニューに載ることも増えている。

岐阜県立恵那農業高等学校では、水を入れたコンテナ容器で栽培する方法「コンテナドボン栽培」を開発[7]名古屋市堀川において、ポットトレイにペットボトルをつけた「ペットボトルミニ浮島」での栽培を2010年に行い、1%程度の塩分を含む汽水域での栽培が可能であることを確認した。2017年2月には竹をしならせ二重のビニールテープで固定した「竹製浮島」を考案し、同年7月に栽培実験を行った。

水質浄化

成長過程で窒素やリンを水からたくさん吸収するため水質浄化作用があるといわれており、岐阜県の阿木川ダムなどで栽培されている[8]

栄養価

100グラム (g) あたりの熱量は17キロカロリー (kcal) ほどある[1]。栄養価などホウレンソウと比較されることが多く、β-カロテンはホウレンソウの4倍以上、カルシウムは4倍、ビタミンCは約2倍ほど含んでいる[1]鉄分も豊富で、貧血予防にも役立つとぴわれている[1]。ただしホウレンソウとは違い、難溶性のシュウ酸カルシウムを多く含んでおり、えぐ味(シュウ酸味)を感じる原因となっている。シュウ酸カルシウムの毒性については経口データはないが、劇物のシュウ酸塩として、飲み込むと有害であると考えられるので区分4[9]に分類されている[10]。シュウ酸カルシウムは尿道結石の原因にはならないが、食べ過ぎに注意することが必要である。

画像

脚注

  1. ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 242.
  2. ^ [(商品名)「空芯菜」第4343207号。1999年12月10日登録]
  3. ^ 第4372141号。2000年3月31日登録。
  4. ^ 第4512839号。2001年10月12日登録。
  5. ^ [1]阿木川ダム水質浄化実験」恵那農業高校 環境科学科
  6. ^ [2]名古屋市堀川にて水質浄化実験」
  7. ^ 月刊現代農業2014年11月号に掲載
  8. ^ 水辺で育つ空芯菜で体に栄養、きれいな環境”. 名古屋市上下水道局. 2020年2月4日閲覧。
  9. ^ [3]厚生労働省:急性毒性(経口)の区分
  10. ^ [4]安全データシート:しゅう酸カルシウム一水和物

参考文献

  • 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、242頁。ISBN 978-4-07-273608-1 

関連項目

外部リンク