廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

お薦めされるがまま

2014年02月26日 | Jazz CD
結局、今月(2月)はレコードを1枚も買わずに終わりました。 この調子でしばらく行ければいいな、と思います。

当然お小遣いが余るので、CDは新品を中心に少し買いました。 DUに行って、フェイスで置いてあるものの中で視聴できるものは聴いてみて、
視聴できないものは直感に従って選びました。 お勧めされるがまま、抗うことなく、という感じです。





■ Joe Robinson Quartet / While I'm Waiting ( BEEZWAX BW 5637A )

「スタン・ゲッツを思わせる最高のテナーのワンホーン」と手放しの褒めようで、怪しいことこの上ない(笑)。 でも、ジャケットのデザインもいいし、
ケニー・バロンの "Voyage"もやっているし、騙されてみるかと思って購入。 うーん、これのどこがスタン・ゲッツなんでしょう・・・・
ま、それはいいとして、ちょっとテナーの音が弱いような気がします。 音自体もあまり綺麗でもないので、テナーの魅力で聴かせるタイプでは
ないようです。 また、曲ごとの緩急のつけ方が弱くて、全体的に曖昧な印象が残ります。 アップテンポはもっと明るく大らかに、バラードは
もっと艶っぽくやればいいのに、もったいないなあというのが率直な感想です。 選曲も含めてアルバム作りのセンスはとてもいいだけに、残念。
裏面にシリアル番号が振ってあり、手持ちの盤は 025341 となっています。


■ Todd Herbert / The Tree of Life ( Metropolitan Record MR 1128 )

2枚紹介されていたので、1枚聴いて良ければもう1枚も、と思いまずはこちらを購入。 音が少し弱いですが、なるほど、テナーの音は魅力的です。
硬く密度の高い締まったクレバーな音です。 全曲オリジナルで固めていますが、どの曲も大変オーソドックスな作りで好感度も高いです。
全編飽きずに聴くことができますが、ミキシングがイマイチで、もっとテナーの音を前面に出して音ももっと大きくしてくれれば言うことなしでした。






■ Julien Wilson / This Is Always ( Lionsharecords LSR20131 )

「デクスター・ゴードン直系、感動のワンホーン・バラード・アルバム」とのことで、おいおいホントかよ、と思うわけですが、愛しのデックスとなれば
これは聴かないわけにはいきません。 ジャケットも洒落てます。 否が応でも期待は高まります。
・・・・ところが、ハズレでした。 サブトーンの乱用で、何を吹いているのかよくわかりません。 フレーズもウネウネ。 落ち着いたバラードを
演出するために低音域にフレーズを集中させているのが却って逆効果、こんな吹き方なんかせずもっと普通に吹けばよかったのに。 それとも、
こんな吹き方しかできないのか。 せっかくバラード・アルバムを作ろうとしたのに、あー、もったいない・・・・


■ Julien Wilson / While You Were Sleeping ( Sound Vault Records Cat# SV0519 )

たまたま同じ日に中古で見かけたのでこちらも購入。 聴いてビックリ、マイケル・ブレッカーみたいな音、同じ人が吹いてるとは思えません。
すごくいい音のテナーです。 但し内容はいわゆるコンテンポラリー・ミュージックで、ジャズではありません。 1度聴けばもういいや、です。
この音で上記のバラードを吹いてくれれば名盤が出来上がっただろうに・・・・・ 






■ Henrik Sorensen Trio / Triologic ( WAVE 19973 )

「オークションで高値をつけた」レアデッドストックが入荷、というこれまた禁断の売り文句が踊る1枚。 北欧のピアノトリオです。
ドルフィン・ダンスやタイム・リメンバードなどの選曲の良さに惹かれて購入。 3,600円という破格のお値段でちょっと躊躇しましたが。
これもミキシングがイマイチで、ドラムが一番前にいるように聴こえてそれがやや耳障りです。 流れるような綺麗なピアノなんですから、
これを前に出さなきゃおかしいでしょ? こういうのはよくわかりません。 内容のほうは、青山や表参道のカフェのBGMで流せばオシャレな
感じですね、というところで、それ以上でもそれ以下でもありません。 私には必要のない盤で、またやっちゃった・・・・・
こんな殺し文句、DUにしか書けないよな。


■ Vittorio Gennari / Blues ( RED Records 123324 RED )

イタリアのベテランアルト奏者の新作ワンホーン、ということで、寛いだ雰囲気を期待して購入。 たまたま中古が出ていました、600円。
なんで新作なのにもう中古にだされたの?と若干不安でしたが・・・・ 内容はとてもきれいでクリアな録音でオーディオ的快楽度も高いです。
vibが入った構成なので、どの曲も導入部はこのvibから始まります。 ゆったりとフレーズは流れて音も綺麗でいい感じかも、と思いつつ
聴いていきますが、あれ、ちょっとvibの演奏が長いぞ、と思います、いつまでやってるんだ? なかなかasが出てきません。
結局最後の方でようやく出てきて、短いセンテンスを吹いて終わります。 音量豊かで濁りのないお手本のようなアルトで素晴らしいのに。
これ、一体誰のリーダー作だっけ? 






■ Tim Warfield / Inspire Me ! ( Herb Harris Music )

出ました、これは傑作です。 ここ数か月の間に買ったCDの中ではダントツの良さ。 ゆったりとした独特の間を持ったソウルフルなハードバップで、
こういうのはちょっと珍しいのでは? 所々にドルフィーを思わせる不協和音なハーモニーが隠し味として使われたりして、そういうところも
よく考えてるなあと感心します。 強面のジャケットのせいで手に取らずに済ますと、損をします。 愛聴盤です。


■ Robert Glasper Experiment / Black Radio 1&2 ( Blue Note 88333 & 0602537433858 )

廃盤オリジナルレコードに群がるモダンジャズオヤジ達の中で、ロバート・グラスパーの名前を知っている、あるいはCDを聴いたことがあるという人が
どれだけいるか知りませんが、これが今現在の同時代ジャズだと個人的には言い切りたい2枚です。 ジャズとR&Bとヒップホップの融合、というと
モダンジャズオヤジたちはビビッてチビってしまうかもしれませんが、内容は昔の言い方をするといわゆるモダンなブラコン、過激なヒップホップ色
はありません。 グラスパーのピアノはハンコックのような独自のまったく新しい洗練さがあって元々素晴らしかったのですが、ここでも随所に
その音が鳴り響いています。 ブルーノートがこれを出したということに重要な意味があるわけで、これを聴かないというのであればジャズ・ファンの
看板は外した方がいい。 Vol.2 のほうが音楽的に成熟しています。


最近のCD探しは、かなり面白いです。 玉石混淆ですが、その中から当たりを探していく快楽は廃盤探しとまったく一緒、ハズレを引いたときですら
楽しいです。




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大好きな地味盤たち

2014年02月23日 | Jazz LP (Savoy)

The Curtis Fuller Sextett / ( Savoy MG-12144 )


The Jazztett結成前夜の時期の録音という興味深いアルバムです。 サド・ジョーンズ、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソンという珍しい顔ぶれが
揃っています。 サド・ジョーンズはいつも通り端正なソロをとり、マッコイは抑制の効いた上手いピアノを弾き、ギャリソンは高速テンポの曲でも全く
ブレることのないテンポをキープする凄腕を見せますが、まあこの人たちにしてみれば当たり前のことなんでしょう。

A面は少し出来が悪い感じがします。 ゴルソン・ハーモニーが聴かれず、各人のソロだけにスポットが当てられたマイナー・ブルースばかりで、
ちょっと暗い感じです。 バラードもカーティス・フラーの悪いところが出てしまい、かなり退屈な出来です。 ところが、B面になると分厚い
ゴルソン・ハーモニーが魅力的な楽曲が並び、演奏の纏まりもよく、素晴らしいです。 特にベニー・ゴルソンはいつもの趣味の悪いくすんだ音色の
ウネウネフレーズを抑えていて、とてもいいソロをとります。

レコード番号的には以前取り上げた Bill Hardman のレコードに隣接するし、ジャケットの意匠も同じようなダリもどきの訳の分からない絵なので、
あのレコードを知っている人なら同様の素晴らしさを期待してしまいますが、こちらはちょっと地味かもしれません。 

DU的に言えば中級廃盤ということなんだろうし、演奏も地味なので特に褒められることがない盤なんでしょうが、それでも私は結構好きです。
ドラムがデイヴ・ベイリーなので、久し振りにこちらも聴いてみました。



The Dave Bailey Quintet / Two Feet In The Gutter ( Epic LA 16021 )


みんなが褒めるEpic3部作の一角を占める名盤ですが、この Two Feet は他の2枚と比べるとスタジオライヴ形式ではないせいもあって音の鮮度が低いし、
演奏にも勢いがなくて正直少し退屈です。 せっかく Comin' Home Baby や Shiny Stockings なんて名曲をやっているのにもったいないです。

一方、上記のSavoy盤はRVGなので鮮度の高いくっきりとした立体感があるサウンドが素晴らしいし、各人の腕が高くてやはり格が1枚上手。
でもEpic盤ほどのステイタスを持てないのは、やっぱりいただけないジャケットのせいなんでしょうね。 残念なレーベルです。

尤も、私もこのEpic3部作は大好きです。 3枚とも初版を持っているし、iPod用にCDもちゃんと揃えている。 
この3枚には演奏家やレーベルのネームバリューなどの外形的なものからは解き放たれ、音楽が独りで自由に泳いでいるのを感じます。
演奏がいいとか音がいいとかだけでは説明できない不思議な解放感と陶酔感があって、他のレコードに同様の事例を探すのは難しい。

地味盤同士、あくまでも聴き比べてみたらたまたまこういう違いがあった、というだけの話ですので、念のため。



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セントラルパークでスケートを

2014年02月22日 | Jazz LP (United Artists)
私が一番好きなビル・エヴァンスのレコードは、リヴァーサイドの諸作ではなく、これかもしれません。



Bill Evans / Undercurrent ( United Artist UAJ 14003 )


理由は簡単で、B面に収録されている Skating in Central Park が好きだからです。 ジョン・ルイスが作曲した小さな愛らしいワルツ。
エヴァンスは、こういう可愛い曲を取り入れるのがうまかったですね。

このレコードは名盤ガイドブックには必ず載る必殺の名盤なわけですが、そこで評論家が褒めるのは My Funny Valentine をアップテンポで処理した
解釈の素晴らしさやジム・ホールのカッティングの見事さばかりですが、私は初めてこのレコードを聴いたときから今日まで、それをなるほどなあ
と思ったことは全然ありません。 

このアルバムは全体を通して、まるで冬のひんやりと寒い曇り空に覆われた人気のない都会の風景を思わせる静かに透き通る寂寥感が素晴らしく、
それがこのアルバムの魅力を決定づけています。 他にも、Dream Gypsy や Romain などの名曲があり、全編通して素晴らしい。

また、このレコードはオリジナル盤が芯の太い迫力のある素晴らしい音で、これはCDでは決して再現できません。 
だから、コンディションにはかなりこだわってきれいなのを探しました。 8,400円。

この愛らしいワルツを、オリンピックで苦悩と歓喜の涙を流した浅田真央さんに教えてあげたいです。 
いつか、彼女が理不尽な重圧から解放されて、誰も知らないどこか遠くの地でこれを聴きながら、誰かのためにではなく1人静かに
スケートを楽しんでいる、そういう日がくればいいのにな、と思います。



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7inchを買わずに済ませる方法

2014年02月17日 | Jazz LP (Europe)
前回の "Fair weather" 繋がりです。


The Diamond Five / Montmartre Blues ( Sonorama C-50 )

彼らのラジオ放送音源の4曲を含むコンピレーションCDで、このラジオ音源の中に "Fair Weather" があります。 これがすっきりとしたアレンジで
なかなかいい演奏です。 正確に言うと、演奏そのものというよりすっきりしたアレンジに極めて忠実で逸脱のない優等生ぶりに感心させられます。
これはこのグループの際立った特徴です。 こういうのはアメリカのジャズにはあまり見られないので、愛好家に人気があるのもよくわかります。
尤も、これってジャズなのか?という生真面目な疑問が頭をよぎることもないわけじゃないのですが・・・・

1958年10月からアムステルダムのシェヘラザード・クラブに月イチで出演するようになり、1959年にOmegaレーベルから2曲入りの7inchを出したのを
皮切りに、年一枚前後のペースで7inchを録音していきます。 演奏活動は活発に行っていたようですが、録音に恵まれませんでした。

録音日時順に彼らが残した曲を聴いていくと、面白いように演奏の腕が上がっていくのがわかります。 最初の2曲は雰囲気は悪くありませんが
演奏としては稚拙な感じです。 ところが、1年ごとに演奏が闊達になっていき、上記の "Fair Weather"(1963年)になると、演奏スタイルが
完成したんだなということがわかります。

このシェヘラザードというクラブは、彼らにとって腕を磨く修行の場所だったようです。 その様子が僅かに7inchという小さな断片でしか
残されなかったのは残念です。 彼らが主要なレコードを残した1959年~1964年の5年間に欧州で作られたクラシックのレコードの膨大さを想うと、
当時のヨーロッパ社会がいかにこのジャズという音楽のことをまともに相手にしていなかったか、ということがよくわかります。

事前のアレンジをきっちりと設計してその通りに演奏するので、どの曲も清潔感がありますが全体的に小振りな印象になるのは否めません。
その緻密な設計振りを聴いているとハードバップへの強い愛着を感じます。 ただ、こんな音楽を何年も続けていると、その音楽的飛躍の無さに
ついて悪口を言いだす人が出てきて、本人たちにも迷いが出てくるようになります。

私がレコード漁りをやめていた時期に、たまたまフォンタナの "Brilliant!" がCD化されて売り出されました。 幻の稀少盤の復刻、と大げさに
宣伝されていて、何の予備知識もなく手に取って聴きましたが、随分つまらない内容だなあと思って、そのまますっかり忘れていたくらいです。

でも、こうやって最初から順番に聴いていくと、このフォンタナ盤で急に雰囲気が変わったのがよくわかります。 演奏技術が急にうまくなって
いるし、楽曲もオリジナルで固めてかなり気合いの入ったものを作ろうとしていたんだなということがわかります。

きっと品のいいハードバップからの卒業を目指したんでしょう、演奏が格段にうまくなっているのは間違いないですが、内容については正直、
取り立てていい出来とは思いません。 この後、ぷっつりと録音が途切れることになるのも、そういうことと無関係ではなかったのでしょう。




The Diamond Five / Amsterdam Blues ( 蘭Philips 6440 321 )


私は7inchは買いません。 音楽を聴くメディアとしては取扱いが面倒だし、大金をはたいて買っても商品としての満足感が全くないからです。
それでしか聴けない音源は多いし、ジャケットの意匠も見事なものが多いし、こだわって集める方の気持ちはよくわかりますが・・・・

幸運なことに、このグループには1978年に12inchとして切り直したこのレコードがあります。 EPのすべてが収録されているわけではありませんが、
主要な曲は入っているし、音も悪くない。 7inchの再発は板起こしの場合も多く、私のような"7inchは買わない派"にはなかなか辛いところですが、
このLPはマスターテープを使っているようです。 さすがはフィリップス、ありがたいです。 6,300円、高いんだか安いんだかよくわかりませんが。




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今週の成果

2014年02月13日 | Jazz CD
2014年になってから、あまりレコードを買っていません。 どうも惰性で買うようになってしまったみたいで、手に入れても嬉しさみたいなものが
希薄になってきてしまったからです。 こんな気持ちで買い続けてもいいことないよな、と無意識に自問自答するようになってしまいました。

どのレコードも昔聴いたことがある、というものが結局多くて、そういうのを今になって買い直してみても、記憶の中に既にあるものを再確認する
という作業になるだけで、そこには新鮮な感動は当然ないからです。 以前に比べて所有欲みたいなものは自分の中からは無くなってきているし、
だんだん残り少なくなっていく人生の時間の中でどれだけ初めての感動に出会えるか、のほうが遥かに重要事項になってきました。

買った時に本当に嬉しいなあと心から思える気持ちが戻ってくるまで、しばらくは買うのをやめようと考えています。
一方、CDのほうは知らないもののほうが圧倒的に多いので、こちらはこれまで通り、ぼちぼち買っていこうと思います。

今週も仕事の合間にJazz Tokyoに顔を出しましたが、CDだけを物色して、レコードのコーナーには行きませんでした。
その時に出会ったのが、これです。


Krzysztof Komeda / Ballads ( Power Bros PB00185 )



コメダの音盤は今まで何となく手に取らずにやり過ごしてきたのですが、これは"アリス・イン・ワンダーランド"を演っているので買い求めました。
おそらく正規録音ではないのでしょう、1962年にワルシャワで行われたライヴ音源で、音質もさほどよくはない(音が奥に引っ込んだ感じ)ですが、
そういう欠点を補って余りあるいい演奏です。 タイトルは"Ballads"となっていますが、ミドルテンポのものも収録されています。

収録されている彼のオリジナル曲は如何にも欧州の音楽家らしい内省的て抑揚の薄い楽曲ですが、"アリス・イン・ワンダーランド"はエヴァンスを
意識した演奏とはいえ、なかなかいい出来です。 本当に愛らしい曲だなあ、と思います。 何度聴いてもいいです。

ポーランドという哀しい歴史を背負った国のイメージからか、コメダを語る際はいつも何やら深刻な口調になることが多いようですが、
この愛らしい曲を楽しそうに演奏している様子を聴くと、この人へのイメージも変わってくるような気がします。 

ところで、3曲目のタイトルが "Unknown" となっていますが、これは "Fair Weather" です。 欧州のジャズメンはみんなこの曲が好きみたいですね。



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現代の優れたヴォーカルたち

2014年02月11日 | Jazz CD
美人女性ヴォーカルが嫌い、というのはあくまでも廃盤レコードの世界の話で、現代の録音にはいいものがあるので割とよく聴きます。
内容に関係なく10万円近い値段で売られているのを見る度に胸が悪くなる、というだけで、健全な買い物ができる現代の音盤については
素直にいいものはいい、と思えるわけです。




■ Calabria Foti / A Lovely Way To Spend an Evening

古き良き時代のオールドスタイルを模したバックのオケや本人の唱法がとても素直で好感度アップですが、そういう演出以前に深い紫色を思わせる
ような素晴らしい声、ゆったりしたムード、抜群に上手い歌ですっかり魅せられます。 見た目は若いのに、この落ち着き払った大人の色香は何?
"Do It Again" が最高の出来です。


■ Sinne Eeg / The Beauty Of Sadness

Amazonの中をブラブラ散策してた時にユーザーレビューが高かったので買ってみました。 おそろしくレベルの高い歌唱力で、ジャズヴォーカルでは
とても括れない人です。 だから制作側もありふれたスタンダードなんかは歌わせず、この人の力量を発揮できそうなオリジナル楽曲をあてがって
いますが、逆にそれが失敗しているようです。 本人も上手く表現できないことに薄々感じているようなところがあり、アルバム全体としては
イマイチです。 これはDU行きかな、とがっかりしながら聴き進めていたのですが、Jimmy Rowles の "The Peacocks" が始まった途端に、
その深淵に引きずり込まれてしまいました。 この1曲のために手元にある1枚。






■ Sunny Wilkinson / Alegria

私が昔レコードを買い漁っていた頃(もう、20年近く前・・・)、ホンダのプレリュード(懐かしい・・・)のTVCMでここに収録された"Round Midnight"が
使われて、それを聴いて耳を奪われました。 歌うには難しすぎるこの曲をここまで上手く歌ったのは、これが初めてではないでしょうか。
シンセを使っていたり、Steve Winwoodの曲をやっていたり、と純粋なジャズとは言えないかもしれませんが、20年聴き続けても全く飽きません。 


■ 阿川泰子 / Echoes

阿川泰子の驚愕の傑作。 これ以降、彼女は傑作を連発し出します。 それまでの作られた間違ったイメージをここで完全に払拭しました。
ブラインド・フェイス、スティーリー・ダン、ポリス、スティーヴ・ミラー、トッド・ラングレンらロックの隠れた名曲を掘り起し、イギリスのロック・
ミュージシャンにプロデュースさせて、独自のブレンドされた音楽を確立しました。 嗅覚鋭いクラブDJたちをも夢中にさせたほどの出来の良さです。 
ロキシー・ミュージックの "Same Old Scene" が秀逸。




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同じフランス録音なのに・・・・

2014年02月09日 | Jazz LP (Europe)

The Ronnell Bright Trio / ( 仏Polydor 46 106 )


これはもちろん欧州ジャズではなく、アメリカのジャズです。 サラ・ヴォーンの専属歌伴だった当時のロンネル・ブライトたちがサラの欧州ツアーに
ついていった際にたまたまフランスで録音をしただけなのですが、きっと現地ではとても手厚い待遇を受けたのでしょう、上機嫌な気分が演奏の
隅から隅までほとばしっている好盤です。 全編ブルースのオンパレードで、当時はこんな演奏ができるアーティストは欧州にはいませんでしたから、
それはそれは大歓迎されたに違いない。

私はこの人のリージェント盤やヴァンガード盤を聴いたことがないのでそちらの演奏との比較ができませんが、きっと演奏自体は特に大差はなく、
同じような演奏なんだろうと思います。 何なら、リージェント盤なんかのほうがフレッシュな感覚では優っているのかもしれません。

ただ、このレコードは完成の頂点を迎えていたモノラル録音が素晴らしくて、そのおかげで演奏の瑞々しさが際立ったレコードになっています。
言うまでもなく、当時のレコード製造技術は欧州が世界一で、アメリカはその後ろ姿を懸命に追いかけていた時期です。 このレコードは1958年録音で、
ちょうどその頃は独グラモフォンや英国デッカがモノラル録音の技術的ピークを迎えた時期です。 だから、このレコードも幸運なことに、その恩恵を
享受することができたようです。 

とにかくピアノの運指さばきが澱みなく素晴らしくて、アート・モーガンのドラムの音も残響感が生々しくて、全身で音の洪水を浴びるような感じです。




George Arvanitas Trio ( 仏Pretria 30 J. 3000 )


それに比べて、ちょうど同じ時期に同じ国で録音されたこちらはピアノに覇気が全く無くて、せっかくアメリカから迎えたベースとドラムスの
巨匠の良さが曳き出されずに終わってしまっていて、残念です。

アルバニタは技術的にも演奏家としてもとても上手い人だとは思いますが、ロンネル・ブライトの後で聴くと、音楽的な快楽度は半分以下です。
ブルースを弾いてもフレーズはブツブツと細切れでブルース感も全くないし、音も粒立ちはいいですが小粒で、タッチも弱い。 
このレコードは、ダグ・ワトキンスのスムースなウォーキングベースと品のいいアート・テイラーのドラムだけが気持ちいい。
トリオにしても、クインテットにしても、上手いが故に物まね感ばかりが際立ってしまったような気がします。
「好みの問題」という言い方だけでは解決しない違いがやっぱりあります。

ちなみにこの2枚、表のジャケットデザインがよく似ています。 きっと同じ人がデザインしたんでしょうね。


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惜別の1枚

2014年02月07日 | Jazz CD

Lalo Shifrin / Between Broadway & Hollywood ( MGM E-4156 )


ラロ・シフリンと言えば、私の中ではダーティー・ハリー。 ミッション・インポッシブルのように一聴して印象に残るような派手な曲ではありませんが、
主人公の静かで激しい情熱を想起させるような抑制された感じがとてもいいです。 

映画や舞台の音楽を手掛ける前はジャズ・ピアニストとしてキャリアを始めた人で、南米のレーベルも含めて、ジャズの作品がいくつか残っています。
これもその1枚ですが、映画音楽を3曲取り上げていたり、そのタイトルからもわかる通り、すでに次のステップが視野に入っていたようです。
普通のピアノ・トリオのフォーマットですが、優れたジャズを目指すということはもはやなく、楽曲全体を如何にドラマチックに演出するかということに
焦点が当てられており、そういう意味ではこの時点で純粋なジャズからは心は離れてしまっています。 だから、ジャズのピアノトリオとして聴くと、
物足りなさが残る内容です。 

アルゼンチンの比較的裕福な家庭で育ち、渡仏してメシアンに師事するような人ですから、いくら好きだったからとはいえ、ジャズだけに
固執することもなかったのでしょう。 アナログ時代のジャズ録音としては珍しいレコードですが、アルバム最後に収録された自身の作曲による
"Impressions of Broadway" という曲は物憂げに幻想的で、ジャズの世界への別れの曲のように響きます。 5,000円。 本当は2,000円くらいで
いいんじゃないかという気がしたのですが・・・・




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優れたジャム・セッションの見分け方

2014年02月02日 | Jazz LP (Prestige)

Interplay For 2 Trumpets And 2 Tenor ( Prestige 7112 )


ジャム・セッションというは、ある意味残酷な形式で、単発のアルバムなら気にならないようないろんなことがかなり相対的に浮彫になります。
特にこのアルバムのように同一楽器の複数編成だとそれが顕著なので、当事者たちはさぞやりにくかったことでしょう。

Idrees Sulieman と Webster Young の違いは意外にはっきりとわかります。 Sulieman は硬質で鋭く尖った音、Young は柔らかくふくよかで
暖かい音です。 この2人は優劣の差は感じず、それぞれの良いところがくっきりと際立っています。 Sulieman は旋律の1つ1つをとても
丁寧に吹く人なんだなあということがよくわかる一方、Young はその音色がマイルスそっくりなのに驚きますが、旋律の妙よりもそのサウンドの
魅力で聴かせる人だということがわかります。

このアルバムの目玉は2つあって、1つは何と言ってもコルトレーンがいることですが、彼の最初のスタイルの完成形が最良の姿で聴けます。
彼が吹き始めると場の空気が急に変わってしまう様は凄くて、やはりその存在感が普通の演奏家とは根本的に違うことがよくわかります。
私はPrestige時代のコルトレーンが大好きで、どのアルバムも愛聴していますが、こういう出番の少ないアルバムほど彼の良さが際立つように
思います。 なので、Bobby Jaspar にはこれは気の毒なセッションだったなあ、とここでも彼の薄倖ぶりに同情してしまいます。 相変わらず
締まりのないボワッと膨らんだ音でフレーズの組み立て方も下手だなあ、バラードでこんな早いパッセージばかり入れてどうすんだよ、という感じです。

もう1つの目玉は、名曲"Soul Eyes"のレコード初演が聴けることです。 やっぱりこの曲はコルトレーンのインパルス盤が1番いいと思いますが、
この演奏も捨てがたい。 4管によるテーマの重奏が感動的で、Sulieman の丁寧な演奏が素晴らしい。 そして、コルトレーンの落ち着き払った
様子の見事さ。 この曲は彼のためにあるのだと思います。

そして、Paul Chambers がいることでこのアルバムカラーが決定づけられているように思います。 実は、本当の意味で演奏に色付けできるのは
ベースやドラムスたちなのですが、それができる演奏家は限られていて、Chambers はその稀有な1人でした。

このレーベルでかなり多くの割合を占めるジャム形式のアルバムの中で、こういう風に演奏家の個性や楽曲の素晴らしさを堪能できるものは
このレコードを筆頭にして枚数はさほど多くありません。 メンツだけは凄いけど中身は・・・・というレコードのほうが多く、値段だけで買うものを
判断していると失敗します。 Prestigeはリハーサルなしのジャム・セッションが多くてどれも素晴らしい、と十把一からげな言い方をされることが
多いですが、それは嘘です。 やはり、1枚ずつ内容を自分なりに消化していくことが大事なんじゃないでしょうか。




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本当の "夜ジャズ"

2014年02月01日 | Jazz LP (Blue Note)

Grant Green / Green Street ( Blue Note 4071 )


ギターアルバムは、人数の少ないグループ編成のもののほうがその魅力がよく伝わります。 一番理想的なのは、g、b、ds のトリオです。
そして、その最高峰はやはりこれではないでしょうか。

ブルーノートは4000番台にもなってくると、企画力が優れてきます。 このレーベルでデビューしたグラント・グリーンは4000番台に素晴らしい
レコードをたくさん残しましたが、そのどれもが違ったグループ編成となっていて、アルバム毎のコンセプトがはっきりしているのに感心します。
あとは各自の好みで好きなのを選べばいいわけです。

私はできるだけ上記のトリオ編成のものを探して聴くようにしています。 ピアノやオルガンはやはりギターと音域がかぶるので、
アンサンブルとしては重複感があってよくないなあと思うし、管楽器が入っているとどうしても主役を奪われた格好になって不満が残ります。
でも、そういうトリオ編成の音盤は少ないし、そもそも変化が乏しいのでアルバム1枚通して退屈させずに聴かせるのは相当難しい。

そういう意味では、このアルバムの出来の良さは奇跡的といっていいかもしれません。 A面1曲目のブルースの素晴らしさにガツンとやられますし、
B面1曲目のリフの格好よさはウェスの "Four On Six"みたいだし、とにかくオリジナル曲の出来が素晴らしいのですが、1番の成功要因は
やぱり全編を覆う夜の雰囲気でしょう。 ちょっと筆舌に尽くしがたいムードがあります。 "夜ジャズ"という言葉が流行ったそうですが、
この言葉にはやはりブルースが相応しく、そのフィーリングがないものに対して使われるとちょっとイラッとします。

このレコードは溝有りがオリジナルだと言われていますが、1500番台後半のNY23問題と同じく、溝有りは盤厚の薄いものが多いです。
だから、このジャケットは底が抜けてないわけです。 それに音の違いも別にあるわけでもないので、もうこのあたりになると
溝の有るなしにはこだわらなくてもいいんじゃないかと思います。 ピカ盤で、23,000円也。

4000番台はいよいよジャズが多様化の兆しを見せ始める重要な時期の録音なので、細かい仕様よりも純粋にその内容を楽しめばいいですよね。


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