Takehiko Ito
More on my website: http://www.itotakehiko.com
Supervisors: Johan Galtung
Phone: +81449881431
Address: Wako Universtiy
2160 Kanaimachi
Machida, Tokyo, 195-8585, Japan
Supervisors: Johan Galtung
Phone: +81449881431
Address: Wako Universtiy
2160 Kanaimachi
Machida, Tokyo, 195-8585, Japan
less
InterestsView All (26)
Uploads
Papers by Takehiko Ito
[方法] 高齢者の強みを活かした訪問看護経験がある看護師11名を対象に半構造化面接法による聴き取り調査を行った。分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。[結果] その結果、病態の急激な変化を呈す状態でない場合において、《高齢者の強みの把握》がなされ、《強みを活かした看護アプローチ》が導入される。その実践は【強みを活かす働きかけ】、【強みを維持・調整する働きかけ】、【強みを活かす基盤づくりをする働きかけ】に分けられた。[結論] 疾患や加齢に伴う身体的変化を兼ね合わせて生活をする高齢者に対し、強みを活かしながら看護をしていくためには、高齢者の力を信じて関わることの傍らで、体調面の安定化に留意しながら高齢者の自律的な生き方を支援することの必要性が示唆された。
キーワード:強み,高齢者,訪問看護 実践、M-GTA
Key words:strengths, the elderly, practices visiting nurses, grounded theory
[目的] 本研究の目的は、訪問看護実践場面より、看護師の高齢者の強みのとらえ方と看護においての強みを活かした実践について、そのプロセスを明らかにすることである。
[方法] 高齢者の強みを活かした訪問看護経験がある看護師11名を対象に半構造化面接法による聴き取り調査を行った。分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。[結果] その結果、病態の急激な変化を呈す状態でない場合において、《高齢者の強みの把握》がなされ、《強みを活かした看護アプローチ》が導入される。その実践は【強みを活かす働きかけ】、【強みを維持・調整する働きかけ】、【強みを活かす基盤づくりをする働きかけ】に分けられた。[結論] 疾患や加齢に伴う身体的変化を兼ね合わせて生活をする高齢者に対し、強みを活かしながら看護をしていくためには、高齢者の力を信じて関わることの傍らで、体調面の安定化に留意しながら高齢者の自律的な生き方を支援することの必要性が示唆された。
キーワード:強み,高齢者,訪問看護 実践、M-GTA
Key words:strengths, the elderly, practices visiting nurses, grounded theory
キーワード:夢、東日本大震災、テキストマイニング、津波、スピリチュアリティ、あいまいな喪失
Keywords: spirituality, the local elderly, life events, encouragement, empowerment, human relationship
目的:本研究の目的は、ハノイの日本人駐在員の直面する困難を明らかすることである。
方法:ハノイにおいて半構造化面接を日本人駐在員男性4人に対しておこなった。
結果:事例1は、60代男性、前職は大企業製造業ベトナム社長で、現在中小企業副社長である。働きすぎの自覚症状なしで過労で倒れ2年間思うように心身が動かなかったが健康をとり戻す。慢性疲労症候群とみられた。事例2は、40代男性、大企業中間管理職、仕事の半分は出張、帰宅は寝に帰るだけで。ある日無自覚に涙が流れ、精神的に参っていると気づき医師と話してすっきりしたあとは、自分で全てを抱えないようにしたとのこと。家族がハノイにいるのが癒しになっている。事例3は、30代大企業中間管理職、赴任当初は仕事をしてても、してない時もストレスだらけであった。ベトナム人スタッフたちとの文化の違いや日本よりも増えた業務量に悩む。家族一緒にいることにより、幼い子供を育てる環境の不安や心配だったが、3年たった今は生活に慣れて帰国したいとは思わない。事例4は、40代男性、前職ゲームソフト技術者、現在は日本人向けベトナム情報誌記者で、前職場はうつ病発生率が非常に高かったので、自分もなるのでないかと不安になり退社した。
考察:ハノイ駐在員の特徴として以下のことが明らかになった。ベトナム人との文化の違いと日本の時より仕事量がふえたことによるストレスが見られても、そのことに自覚がない場合がある。ベトナムという異文化を吸収できる人とできない人がいることが明らかになった。具体的なストレスとして、文化・風習面での時間や約束の価値観の違い、環境・天候面での、24時間バイクの騒音、野犬が野放し、大気汚染や高温多湿で外出をためらうことにより運動不足、対人面での狭い日本人コミュニティからの圧迫感、などが見られた。家族関係の重要性も明らかになった。ベトナム駐在員のメンタルヘルスは、個人・家族の個別性と、ハノイ・ベトナム固有の特殊性と、日本人労働者の持つ一般性の3つの観点が必要である。
グ型の授業を実施し、電子黒板やタレットPCなどの教育ICTを効果的に活用しな
がら学習者の言語能力を育成する傾向が強まりつつある。外国語授業においてア
クティブラーニング的な学習活動を実施することは必要不可欠であるが、ICTにつ
いてはその活用効果を高めるために、教師が適切に活用を図ることが期待されて
いる。本発表では、一般家庭で広く普及しているビデオカメラをICT機器として活
用し、学習者のビデオ映像を視聴させる授業の実践について報告する。
これまでのビデオ映像活用の研究から、英語授業における学習者のスピーキン
グ映像は、学習者自身が視聴することで可視的な省察につながり、実際のパフォ
ーマンスと自身が思い描いているパフォーマンスの違いを確認できることが示さ
れた。さらに、ピア以外の学習者の映像をモデルとして視聴するは、学習者の内
集団バイアスが排除され、その映像をより客観的に視聴することも明らかにされ
ている。学習者以外の授業や学会等でのビデオ映像の活用に関しては、学習者か
ら許可を得ている。しかし、ビデオ映像の場合、映像から個人の特定が可能であ
るために、映像の活用を躊躇う学習者もおり、とくにスピーキングパフォーマン
スが大きく向上したと思われる学習者のビデオ映像をモデルとして他の学習者に
視聴させることができないのは残念である。本発表では、実際に授業で活用され
たビデオ映像の一部を示すことにする。
Keywords: dream, 3.11 earthquake, text mining, tsunami, spirituality, ambiguous loss
キーワード:夢、東日本大震災、テキストマイニング、津波、スピリチュアリティ、あいまいな喪失
【目的】本研究では、対象作文中の頻出動詞における性差について、「死」がどのような文脈で用いられているのかをテキストマイニングの原文参照機能を用いて明らかにすることを目的とする。
【方法】『学校動物飼育モデル校事業の作文集』2001年度-2004年度の4冊に掲載された小学生の入賞作文386編を対象とし、テキストマイニングソフトText Mining Studio Ver.4.1の原文参照機能を用いて、「死」が表現される文脈について質的検討を加えた。まず原文参照機能を用いて「死」が表現されている作文を収集し、「死」が含まれる部分を抜き出し、その表現がどのような文脈で表現されているかを質的に分類した。1作文の中に複数の文脈で表現されている場合はそれぞれを1表現として数えた。次に項目×性差のクロス集計をし、性別ごとに各項目の度数が全度数に占める割合を算出した。さらにすべての項目についてカイ二乗検定を行い、性差の有無を検討した。
【結果】本研究対象となった表現数はのべ230(以下表現数はのべ)、男子児童77、女子児童153で、これらの表現は16項目に分類された、すなわち「悲しい」「可哀そう」「寂しい」「残念」「びっくり」「大切に育てる」「回想の中の出来事」「死別体験」「寿命(と折り合いをつける)」「動物はいつか死ぬ」「生と死の体験から命の大切さを学ぶ」「忘れない・大好き」「責任」「動物の擬人化(私を忘れないで)」「観察」「社会問題(と結びつける)」であった。男女ともに「大切に育てる」「回想の中の出来事」「悲しい」が主な文脈でありこれら3項目で全体の5~6割を占めていたが、「死別体験」「生と死の体験から命の大切さを学ぶ」は男子児童において女子児童の場合の2倍になっていた。さらに、「寿命(と折り合いをつける)」「びっくりした」「社会問題(と結びつける)」は男子児童の表現には見られなかった。カイ二乗検定の結果は、5%水準でも性差が見られる項目はなかった。
【考察】カイ二乗検定の結果からは性差が認められなかったが、「寿命(と折り合いをつける)」の項目はp値が0.06であり、さらにこの項目の表現が0であったことを考えると、対象作文からは男子児童が「死」について寿命だから仕方がないと折り合いをつけることなく、死について「(日常とは違う)死別体験」に「びっくりする」様子が推測できた。本研究の対象となった作文は10年以上前の作文であり、学校での動物飼育環境も大きく変化していることから、同様の方法で直近の作文との比較検討を行い、環境の変化と児童の動物に対する意識の関係について検討することが求められよう。
G309 いとうたけひこ、・宇多仁美 (2019,3月). 東日本大震災の遺族のスピリチュアリティ: 『私の夢まで、会いに来てくれた』における夢の語りのテキストマイニング分析
要旨:[目的]夢は死者の遺族が本人とコミュニケーションできる機会である。災害の遺族が離別後にどのような夢を見て死者と再開するのかを明らかにする。[方法]夢のインタビュー記録『私の夢まで会いに来てくれた』に掲載された27篇の夢についての語りをテキストマイニングにより分析した。[結果] 出現頻度が多かった単語は、名詞では「一緒」「震災」「津波」「夢」などであり。動詞では「いる」「一緒」「思う」「見る」「言う」であった。また、係り受けの頻度分析や評判分析により夢の特徴が明らかにされた。[考察] 夢を見ることにより、亡くなった家族や現在も行方不明の人・友人などがそこに一緒にいる気配を感じ、会うことができたり、この世とは思えない体験、魂や本来見えないものの世界を体感し、夢と現実のはざまを実感することから遺族は亡くなった人との魂とともにこれから未来に向かう目的や新たに芽生えた価値観、前向きに生きるための方向性を見出すことができることを示した。
キーワード:夢、東日本大震災、テキストマイニング、津波、スピリチュアリティ、あいまいな喪失
大学の英語授業においてビデオによる学習者モデルを活用したスピーチ指導が,学習者の内的活動における学習の深い理解を伴う学び,つまり「深い学び」をもたらすことを明らかにすることである。さらに,学習者モデルを取り入れた学習形態が学習者を主体とした,外的で能動的な学習であるアクティブラーニングとして展開する可能性について示すことを目的とする。
2. 研究方法
まず,近年の日本におけるアクティブラーニング研究の動向を総括したうえで,日本の教育現場でアクティブラーニングが注目されることになった背景と,大学授業におけるアクティブラーニングの位置づけを解説する。つづいて,大学授業におけるビデオ映像の教育的活用について考察し,アクティブラーニングの視点からみた,ビデオによる学習者モデルを用いたスピーチ指導の有用性および教師の役割を検討する。
3. 結果
3.1 日本におけるアクティブラーニング研究の動向
過去10年(2007-2016)におけるアクティブラーニング(あるいはアクティブ・ラーニング)を論文名に含む論文数の推移をCiNii Artcilesで検索した。結果は図1の通りである。
図1 CiNii Articlesでみるアクティブラーニングに関する論文数の推移(2007-2016)
3.2 アクティブラーニングの背景
1990年代にアメリカの大学で教育方法の見直しを求める研究者が出現し,学習者に教えることを目的とする教授パラダイム(instruction paradigm)から学習者が学ぶことを目的とする学習パラダイム(learning paradigm)への移行の必要性が提唱されるようになった(Barr & Tagg, 1995)。もう一つは,大学教員の役割を研究活動から教育活動へ戻そうとしたことである(溝上,2014)。
3.3 ビデオ映像の教育的活用
教育メディアのなかでも,教材として製作されて教室で使用されるビデオのほかに,学習者が外国語を使用している様子,例えばスピーチやプレゼンテーションが撮影されたビデオの有効活用が可能である。近年,教育現場における学習者のビデオによるフィードバック活用への期待が高まっている(牧野,2014など)。
教育現場における学習者のビデオ活用効果の研究を発展させ,Okada, Sawaumi, & Ito(2014)は観察学習の枠組み(Bandura, 1971, 1986)を用いてビデオによる学習者モデル活用の効果を検証した。学習者はビデオ媒体によるスピーチのモデルを観察することで学んだ知識を自分の能力を高めるために活用し,スピーチ参加への意欲を引き出せることが確認された。
4. 今後の課題
英語授業におけるスピーチ指導では,原稿を作成し(書く),話す練習をし(話す),クラスでスピーチをする(発表する)という,溝上(2014)が定義するアクティブラーニングを伴う活動に学習者が関与することが可能となる。スピーチ発表後であっても,評価や省察などの活動は,学習者の高次的な思考を活性化させ,深い学びへとつなげることができる。
深い学びとしてのアクティブラーニング(松下,2015)では,大学における英語教育の場合,英語やジェスチャーを媒介としたコミュニケーション能力の向上だけでなく,他者への気づきや自己肯定感に基づく自己主張などをとおして,学習者の人間性の涵養にもつながっていくことと思われる。そのために,ビデオ映像の活用のさらなる実践と研究の今後の発展に期待する。
謝辞
本研究はJSPS科研費C15K02730の助成を受けたものである。また,清泉女子大学言語研究所の客員所員として活動した研究成果である。
参考文献
Bandura, A. (1971). Analysis of modeling processes. In A. Bandura (Ed.), Psychological modeling: Conflicting theories. Chicago: Aldine-Atherton. 1–61.
Bandura, A. (1986). Social foundations of thought and action: A social cognitive theory. Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall.
Barr, R. B., & Tagg, J. (1995). From teaching to learning: A new paradigm for undergraduate education. Change, 27(6), 12–25.
Okada, Y., Sawaumi, T., & Ito, T. (2014). Different effects of sample performance observation between high and low proficiency English learners. The 6th Centre for Language Studies International Conference Proceedings, 394–413.
牧野眞貴(2014).「リメディアル教育対象クラスにおける携帯電話動画撮影機能を利用したスピーチトレーニング実践報告」Language Education & Technology (51) 297–318.
松下佳代(2015).『ディープ・アクティブラーニング―大学授業を深化させるために』勁草書房.
溝上慎一(2014).『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』東信堂.
【方法】
調査期間:2016年9月〜2017年1月
調査対象者:首都圏にある大学において筆者が担当している半期15回の講義「教育心理学概論」の受講生を対象とした。2016年度後期に履修登録した97名を対象としてデータ収集を行った。受講生の大半はA学科の学生であり、本授業は学科の必修科目であった。それ以外に他学科の学生が20名含まれていた。学生には初回の授業で4〜6名のグループを作らせた。13グループが同一学科、4グループが複数の学科から構成されていた。
「質問づくり」:「質問づくり」は半期15回の授業のうち5回で行われた。各回は以下のプロセスで構成される。⑴授業担当者による「質問の焦点」作成 ⑵ルールの提示と議論 ⑶「質問の焦点」を基点とした小グループでの質問づくり ⑷作成された質問をopened/closed questionに分類 ⑸作成された質問を比較・評価し、グループごとに最も重要な質問を選抜 ⑹学習目標に合致した質問の使い方の検討 ⑺作業のふりかえりである。本研究では、各回の授業テーマに合わせて、以下のような質問の焦点を用いた。「批判的思考の重要性」(第1回)、「マルチプル・インテリジェンスを授業に活かす」(第3回)、「学校に行かない生き方」(第7回)、「性暴力被害者の二次被害を予防する」(第12回)、「多様な子どもたちを理解し支援する」(第15回)であった。
手続き:第1回と第15回の授業時にそれぞれ事前、事後テストの質問紙を配布し、集団で調査を実施した。
調査内容:1)質問に対する態度 道田 (2011) が使用した質問態度に関する尺度5項目 2)批判的思考態度 平山・楠見 (2004) の作成した批判的思考態度尺度33項目
【結果】
結果の分析は、事前事後テスト調査時に欠席した学生、欠損値のある学生、欠席の多い学生(4回以上欠席)を除き、70名を対象として行った。
1) 質問態度 事前・事後テストでの質問態度尺度評定値をTable 1 に示した。対応のあるt 検定を行った結果、項目2「疑問を感じたら、それを言葉で表現することができる」と、項目3「質問をすることで自分の理解を深めることができると思う」で有意に得点が上昇していた。それ以外の項目では有意差はみられなかった。
2) 批判的思考態度 事前・事後テストでの批判的思考態度尺度評定値をTable2 に示した。対応のあるt検定を行った結果、「論理的思考への自覚」尺度において、有意に得点が上昇していた。それ以外の尺度では有意差は見られなかった。
Table 1 質問態度尺度評定値の前後変化
Table 2 批判的思考態度尺度評定値の前後変化
【考察】
以上のように「質問づくり」を授業に導入する前後において、受講生の質問に対する態度および批判的思考態度の一部に肯定的な変化が示された。「質問づくり」は“質問をつくること”を目的としたグループ活動であり、メンバーのつくった質問をきっかけに自らの問いが立ち上がり、そしてまた自らの質問がメンバーの問いを立ち上がらせる。そのような協同学習としての特徴が質問をすることへの好意的な態度や論理的に思考することへの気づきへとつながったと考えられる。
秋田 (2012) は協同学習の機能として「対等な関係における学習喚起」「知識の定着・精緻化」「理解の深化・発展」をあげている。「質問づくり」の授業への導入は、受講生の授業への参加動機を高めることや、メンバー間の相互作用によって探求を深めることに寄与すると考えられるが、本研究ではそれらに対する効果は明らかにされなかった。また質問の質や質問力の向上との関連についても明らかにされなかったため、今後の課題としたい。
【主要引用文献】
道田泰司 2011 授業においてさまざまな質問経験をすることが質問態度と質問力に及ぼす効果 教育心理学研究, 59, 193-205.
Rothstein, D. & Santana, L. 2011 Make just one change: Teach students to ask their own questions. Cambridge, MA: Harvard Education Press.
【方法】 保育問題を研究する有志の会に所属する6保育園の園長と主任を対象として、半構造化面接を行った。対象者は園長が6名、主任が5名で計11名であった。面接時間は1名につき1時間程であった。事前に研究の趣旨説明と協力依頼を口頭で行い、承諾を得られた対象者へ研究趣旨及び依頼文書、研究計画書、面接調査のガイドライン、研究協力承諾書を郵送した。面接調査を行う際に文書と口頭で研究趣旨説明と協力依頼を行い、承諾を得られた対象者に面接調査を実施した。面接の内容はICレコーダーに録音し、内容を文字に起こし、タブ区切りデータを作成し、Text Mining Studio Ver6.1によりテキストマイニング分析を行った。
【結果】 保育士の回答で100回以上の単語出現頻度(図1)のうち、名詞で最も多いのは428回出現の「子」で、原文参照すると親と離別した要因の多くは<離婚>で、その経緯や子どもの様子が語られていた。「離別した親と会った後は些細な事で泣いた」、「離婚後抱っこをせがむようになった」、「離婚後も特に変化が無かった」、「むしろ表情が明るくなった」などであった。子どものために、保育園では充実した楽しい生活ができるよう努めることが重要と語る保育士が多かった。次いで343回出現の名詞「お母さん」は、離婚家庭の母親の姿と、保育士の母親へのかかわりについて語られ、母親の生活や精神状態が子どもに与える影響が大きいため、母親への支援が重要だと回答する保育士が複数いた。
また、形容詞及び形容動詞に注目し、159回出現の形容詞「良い」を原文参照すると、保育士が離別体験をした子どもや親へのかかわりを「~すれば良かった」と振り返る語りが多かった。「(子どもの)本音ともっと接してあげればよかったな」、「結局自分が何をしたらいいのかわからなくて」、「少なくても(子どもの)気持ちは、私は知ってるよ、っていうようなことがあってもよかった、あるべきだったんじゃないかな」、「どこをどうしてあげたらいいのかなって」、「(児相にも)見てもらったりしたほうがいいのかな」、「関係機関とか、あの家のその状況っていうかね、そういうのに踏み込んだ方が良かったのかな」などの回答があった。さらに形容詞「良い」に注目し、前提単語「踏み込む」を原文参照すると、「これからいろんなお子さんと接したときに、なんか自分自身ももうちょっと踏み込んでみよう」、「(朝、母親がいなくなった時に)もしそこで、もうちょっと自分が踏み込んでいけたら結果は変わっていたかもしれない」など、より具体的なかかわり方についての思いが語られていた。
12回出現の形容動詞「かわいそう」は、離婚による両親の不在で生活が不安定になった子どもや、単親との関係が良くない子どもの状態について語られていた。4回出現の形容詞「ひどい」は、親と離別後の子どもが、虫歯や指吸い、甘えがひどくなったという生活態度の変化が語られていた。
図1 単語出現頻度
【考察】 保育現場における子どもの親との離別要因は<離婚>が多く、今回の面接では死別ケースは無かった。
子どもの変化として、離別の喪失感とともに、生活が大きく変化することによる甘えや怒りなどの感情や行動に変化が見られた。その一方で、特に変化が無い、あるいは離婚により親同士のいさかいを目にしなくなったためか、それ以前より表情が明るくなったと感じる子どももいる。喪失体験とそのグリーフは生活環境や親子関係も反映する個別性の高いものであることが示された。
また、多くの保育士が指摘していたのは、離婚後の単親や家族への生活面と精神的な支えがあるかどうかが、子どもに強く影響するという点である。つまり、子どもの喪失体験の支援には、保護者への支援の視点を含めることが不可欠である。更に、子どもに加え保護者へのかかわりについての振り返り(省察)をする保育士も多かった。親を喪失した子どもの気持ちに寄り添うこと、そして、保護者や家庭の状況を把握し、保育士がその状況により踏み込むことが必要だと考えていた。しかしながら同時に、保育士として何をしたらよいかわからないなどの<戸惑い>を感じている場合もあった。
以上の実態から、保育士が子どもの喪失体験とグリーフに対処する際の今後の課題として、保護者支援およびトラウマケアとその予防に関する「知識」や「スキル」を身につける必要があると指摘したい。そのための保育士への教育的体制の整備が焦眉の急として求められる。
【文献】
Boss, P. (2006) Loss, trauma, and resilience: Therapeuticwork with ambiguous loss. Norton.(中島聡美・石井千賀子監訳 2015 あいまいな喪失とトラウマからの回復:家族とコミュニティのレジリエンス 誠信書房)
本研究はJSPS科研費17K04297の助成のもと行なった。
【目的】ナラティブ教材におけるUDRサイクルの重要性を検討し、アクティブ・ラーニングへの活用の可能性を理論化する。
【方法】ナラティブ教材の教育的効果と意義のもとにアクティブ・ラーニングへの教育的活用の可能性を模索する。倫理的配慮:公開されている研究成果や出版物による検討のため著者の表現や言葉などを改変せず、引用部分を明示し出典を明記した。
【結果と考察】医中誌で「ナラティブ(ヴ)」(5762件)、「アクティブ(・)ラーニング」(2614件)、「精神(看護)」(422766件)のAND検索では0件であった。当事者を教室に招いた講義で「前傾姿勢で話を聞いた」学生の体験(小平ら,2004)は、ナラティブは学生の身体の姿勢を変化させる深い学びで「フロー」(Csikszentmihalyi)の可能性がある。教育に「経験」は重要(Dewey)で、ナラティブ教材は「発達の最近接領域」(Vygotsky)を準備する。看護を学ぶ上で「病いの語り」(Kleinman)、とりわけ「探求の語り」(Frank)に耳を傾け対話することは重要である。ナラティブ教材を参照(授業を聞く)し、図書館で関連の作品や資料を探し、読み(見る)、考えを記述し、学生同士で紹介(発信)して、話し合い、当事者視点での病いの体験について考える、アクティブ・ラーニングの可能性を見出した。ナラティブ教材においてUDRサイクルの内容は重要で、アクティブ・ラーニングに活用する可能性がある。
※本研究はJSPS科研費15K11827の助成を受けた。
【目的】ディベックスの認知症夫婦のビデオクリップを心理学概論の授業でナラティブ教材として用いることにより、学生の認知症の人に対する態度の変容が行われるかどうかを確認する。
【方法】ナラティブ教材の視聴と授業の事前・事後に「認知症の人に対する態度尺度」(金・黒田, 2011)を実施した。授業参加者のうち研究に同意した69人の質問氏の回答より下位尺度「寛容」「拒否」「距離感」「親近感」の得点の平均をt検定により比較した。倫理的配慮:日本心理学会の基準に従い、倫理的配慮をおこなった。成績とは関係なく任意参加であることを説明して同意を得た。
【結果】図1のように、4つの下位尺度全てにポジティブな変化が見られ、統計的に有意差が見られた(p < .001)。
【考察】90分一回の授業であっても、認知症の人に対する肯定的な態度変容が見られた。瀬戸山・森田・射場(2017)の7カテゴリーに基づいて学習効果を考察し、ディベックスの教育的活用は、医療系学生だけでなく、一般学生にも有効であることが明らかになった。
※本研究はJSPS科研費15K11526の助成を受けた。
本報告は、別府宏圀・秋元るみ子との共同研究の一部である。
問題と目的
ビジュアル・ファシリテーション(以下:VF)やググラフィック・ファシリテーション、ビジュアル・ミーティングが会議や教育などでの議論の進行を促進するために活用されている。カウンセリング場面では、描画活動などを媒介としたビジュアル・ナラティブが提唱され、開発されてきている(やまだ、2018)。VFのカウンセリング場面への導入が有効と考えられる。
井上(1998)はカウンセリングにおけるPAC分析の効果として、3つの機能分野、(1)精神間機能分野:“いま、ここで”の信頼関係形成と対話の機能、(2)精神内機能分野:問題への認識と自己理解を深める機能、(3)間接的精神間機能分野:第3者との共有の機能、の3分野に基づき11の機能において検討した(表1の項目参照)。
本研究の目的はVFをカウンセリング場面に導入したコンフリクト解決の事例について本人の了解のもとに、その効果について、PAC分析の効果(井上,1998)である11の機能に準じて検討することである。
事例の概要
・クライエント(以下、CL):A(女性、35歳)
・主訴:アンガー(怒り)コントロールを学びたい。
・シングル・セッションの内容:今まで攻撃的とは言われてこなかったのに最近若いスタッフに「患者をもっとしっかり見なさい」と強い調子で叱責したりし、上司からパワハラの懸念を注意されたり自分でも困っている。アセスメントからは、「怒り」の内容がCLの臨床活動を重視していくか、研究活動を重視していくかのコンフリクトと関連することが示された。そこで、「臨床」を縦軸、「研究」を横軸として、関係があると思われる「人名」を記したシールを貼ってもらい(図1)、各々の関係性の語りを聴いていった。
結果
CLは「コンフリクト解決」の撤退地点に配偶者と両親を貼り「臨床」軸にそって恩師や職場スタッフのシールを布置した。一方、「研究」軸にはシールが貼られなかった。一方、真ん中の「臨床」も「研究」も大事にする斜め軸に尊敬する同僚名のシールが貼られていることは、CL自身およびカウンセラーにとっても大きな気づきを与えた。CLは自己の「怒り」が、自分自身の今後の「臨床」か「研究」かの方向性へのコンフリクトが臨床を大事にしてないと感じる若いスタッフに投射されたものだと納得した。また家族が撤退地点に位置するのは、年齢的に出産への配慮があるのではないかと今後のその点も含めたキャリアのあり方を家族と相談したいと述べ、面談を一応の終了とした。プロセスをふりかえりVFの可能性について検討した。その概要を表1に示す。
図1 コンフリクトの図(X軸は研究、Y軸は臨床)
表1 カウンセリングへの効果
機能分野と機能 VFの可能性
(1)直接的精神間機能分野
[1a.導入促進機能] ◎
[1b. 自己開示促進機能] ◎
[1c. 信頼形成機能] ◎
[1d. 対話発展機能] ◎
(2)精神内機能分野
[2a.共有知識的理解機能] ◎
[2b. 明確化機能] ◎
[2c. 自己理解促進機能] ◎
[2d. カウンセラー気づき機能] ◎
(3)間接的精神館機能分野
[3a.記述記録機能] ○
[3b. 実務説明機能] ○
[3c. 調査査定機能] ○
※ ◎は確実に作用する、○は可能性を表す
考察
表1によりVFのカウンセリングへの導入は、PAC分析と同様多面的な効果があることが明らかになった。
藤原(2011)は教室や研究会場面におけるファシリテーション・グラフィックの10の機能を以下のように述べている。まず、(1)議論を活性化する(触発機能)として、①思考促進機能、②分類整理機能③構造把握機能、(2)議論への参画を促す(対話機能)として④対立緩衝機能、⑥論点明示機能、⑥視点転換機能、⑦比較検討機能、(3)議論を残しておいて活用する(記録機能)、⑧保持記録機能、⑨再現分析機能、⑩系時俯瞰機能を挙げている。比較すると本報告ではカウンセリング場面での気付き機能の独自な有用性を示した。
文献
藤原友和 2011 教師が変わる!授業が変わる!「ファシリテーション・グラフィック」入門 明治図書
井上孝代(1998) カウンセリングにおけるPAC(個人別態度構造)分析の効果 心理学研究, 69, 295-303.
キーワード:ビジュアル、ファシリテーション, グラフィック (いのうえたかよ、伊藤武彦)
第1に、いとうたけひこは、これまでの日本における平和心理学の過去を振り返り、平和心理学の可能性について報告する。第2に、中島常安は「幼児期の平和教育」について報告する。第3に、堀尾良弘は犯罪・非行における暴力性について報告する。第4に、杉田明宏は沖縄ピースツアーの意義と効果について報告する。指定討論者の伊藤哲司は非暴力の心理学の立場から以上の4つの報告についてコメントをする。最後に参加者の討論を通して平和心理学の現在を語り未来につなげていく。
【参考文献】杉田明宏・伊藤武彦 2008 日本における平和心理学の発展:心理科学研究会平和心理学部会20年の活動を焦点に 心理科学, 28(2), 42-55.
はじめに大阪の公立高校のピア・メディエーションを支援している水野氏にその実践を紹介してもらう。
次に、北欧で発展しているSABONAプロジェクトを室井氏に紹介してもらう。
応用心理学の理論的な問題として、杉田氏には、平和心理学の立場から報告をしてもらう。
また、臨床心理学の問題としてコンフリクト解決をどう捉えるかの報告を井上氏にお願いする。
最後に社会心理学の立場からコンフリクト研究をされている大渕氏からコメントを頂く。
実資料をもとに,国家による戦争行動を制御し,平和を構築していくにあたって,心理学はどのような重要
課題と取り組むことが必要かについて考えた。特に,最新の研究成果をもとに,映像資料等を利用した情報
操作によって世論がどのように作り出されていくかに焦点をあて,心理学の意義と役割について討議した。
西牟田祐二氏は,本シンポジウムの企画の趣旨とテーマについて,自身の経済史研究・ナチズム研究の成
果に立脚して,応用心理学的研究が待たれる諸問題について問題提起した。まず最初に, 9.11事件の真相解明
に取り組んだ諸分野の研究の資料を紹介した。それをもとに,特に,国が戦争を作り出していく動機と条件,
全体的なしくみ,そして戦争遂行のための世論誘導の方法,アメリカ政府の世界政策どの関連などを検討し,
心理学研究への課題提起を行った。
それを受けて,いどうたけひこ氏は,映像メディアの心理学的な影響について,実際に9.11事件後の報道
において,映像資料が人々の態度形成にどのような影響を持ったかに関する心理学的な基礎研究を紹介した。
最後に,指定討論どして,大坊郁夫氏は,社会心理学の立場から心理学が考究すべき課題と今後の研究展望
について論じた。また,田中真介氏は,国連が「発達権宣言」の採択に至った歴史的な経緯ど意義をもとに,
どのような困難の中にあっても,人類全体に共通する価値の発見ど尊重を求める取り組みが粘り強く実践さ
れ,世界平和を実現してきた事実を示した。
国際平和を求める人々の切実な願いを受けとめて,子どもたち・大人たちの生命・健康・発達を守り育て
るためには,どのような社会のあり方が必要か。そして,人類に共通する普遍的な価値を発見し尊重し共有
していく人間諸科学のーっとして,心理学がとやのような意義と役割を持っかについて討議された。
。
1998年にGreenhalghとHurwizによって提唱されたNarrative Based Medicineが注目を浴び、患者中心の医療を展開するために「患者の語り」を尊重する動きが各地に広がった。語りに耳を澄まし目を向けることで患者・家族を理解して患者とその家族に寄り添うことが出来ると考える。また、乳がん体験者自身の語りからがんと伴に生きることの身体的心理的様相の実際を具体化して援助のヒントを得ることが可能と考える。本交流集会では、乳がん体験者の語りに焦点を当てて、患者の語りに耳を傾けることの必要性と可能性について、参加者の皆さまと考えていきたいと考えている。
内容は、まず乳がん体験者が闘病記を書く動機について報告を行う。次にウェブサイトJPOP-VOICE・ DIPEx Japanなどに収録された女性乳がん体験者の語りから、転移の有無による特徴について報告する。最後に闘病記の分析からみえた身体的苦痛と病い体験がもたらす肯定的変化に関する報告を行う。
いとうたけひこ (2015). テキストマイニングによる被災体験学(Disaster Experience Research)への混合研究法アプローチ:死に関する表現と心的外傷後成長(PTG). 東西南北2015:和光大学総合文化研究所年報, 104-116.( ITO Takehiko Disaster Experience Research: A Posttraumatic Growth Perspective. Tozai Nanboku: Bulletin of the Wako Institute of Social and Cultural Sciences 2015.
井上孝代 (2015). 東北被災者における援助体験学(Helper Experience Research): 援助者セラピー原則(Helper Therapy Principle: HTP)に着目して 東西南北2015:和光大学総合文化研究所年報, 117-133.
佐藤(佐久間)りか (2015). 患者体験学(Health Experience Research)の実践: 生命予後告知のあり方を巡って~「健康と病いの語り」のデータから. 東西南北2015:和光大学総合文化研究所年報, 134-144.