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nCUBE

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
nCUBE2
nCUBE2のプロセッサボード

nCUBEは、超並列コンピュータのシリーズ名であるとともにそれを開発した企業名でもある。初期のハードウェアは独自のマイクロプロセッサを使っていた。その後、独自のマイクロプロセッサの設計をやめて、サーバ向けの他社製チップで超並列マシンを作成。最近までストリーミング配信(ビデオ・オン・デマンド)に特化したサーバとして販売していた。現在はC-CORというネットワーク関連の企業に買収されている。

歴史

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  • 1983年 - インテルの社員が、インテルが並列コンピューティング市場になかなか踏み出さないことに欲求不満を感じ、nCUBE社を設立した(インテルはその後1989年に市場に参入)。
  • 1985年12月 - 最初のnCUBEのハイパーキューブマシンnCUBE 10がリリースされる。
  • 1988年 - オラクル社のラリー・エリソンはnCUBEに興味を持ち大株主となった。nCUBE社の本社はオラクル社のすぐ近くに移転されることとなった。
  • 1989年6月 - 第二世代のマシンnCUBE 2をリリース。
  • 1994年 - nCUBEは株式上場するまでに成長した。
  • 1995年 - 第三世代のマシンnCUBE 3をリリース。
  • 1996年 - エリソンは nCUBE を縮小(上場廃止)させ、CEOに就任してオラクル社のネットワークコンピュータ部門に編入した。その後、nCUBE社は完全にストリーミング配信サーバのメーカーとなる。
  • 1999年 - nCUBE社はストリーミング配信とそれにCMを挿入するソフトウェアを開発していた SkyConnect というベンチャー企業を買収した後、再度株式公開にこぎつけた。
  • 2000年 - SeaChange International社から特許侵害で訴えられる。
  • 2001年
    • 再度、上場廃止。
    • 4月:ITバブル崩壊と法廷闘争の負担から、nCUBE社は 17%の従業員をレイオフ(解雇)。
    • エリソンがCEOを辞めた。
  • 2002年 - Foster Cityのオフィスを閉鎖。
  • 2003年 - Louisvilleのオフィスを閉鎖。
  • 2005年 - C-COR社に買収される。
  • 2007年 - Arris社に買収される。

詳細

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nCUBE 10(1985年)

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  • 最大1024個のプロセッサモジュールを10次元のハイパーキューブと呼ばれる形のネットワークで接続している。
  • プロセッサモジュール詳細
  • 一部のプロセッサモジュールは入出力用として周辺デバイスと接続されている。
  • nCUBE 10同士を接続することも可能

nCUBE 2(1989年)

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  • 最大4096個のプロセッサを12次元のハイパーキューブ接続で構成。
  • プロセッサモジュール詳細
    • CPU: 32ビット、7MIPS
    • FPU: 64ビット、3.5MFLOPS
    • メモリ: 4~16Mバイト RAM(I/O用プロセッサモジュールはRAMが少ない)
    • 13本のI/Oチャネル(各20Mビット/s)のうち12本がプロセッサ間のハイパーキューブ接続に使用され、1本をI/Oに使用。ワームホール・ルーティングでCPU間メッセージを転送。
    • オペレーティングシステム: nCXマイクロカーネル
    • 1プロセッサモジュール、2プロセッサモジュール、4プロセッサモジュールがある。
  • 入出力: SCSIHIPPIなど

フロントエンドとしてサン・マイクロシステムズなどのワークステーションを使用する。nCXマイクロカーネルは200Kバイトで、ファイル操作を最大96分割して96個のCPUが並行して処理することができる。C言語C++、NQS、Linda、ParasoftのExpressなどが動作した。オラクル社と共同でOracle Databaseも移植され、高性能データベースマシンとしても販売された。このときの技術がのちのOracle 10gグリッド・コンピューティング技術につながっている。実際に納入された最大のnCUBE 2システムは Sandia National Laboratories の 1024プロセッサモデルで、1.91GFLOPSの性能を記録している。

nCUBE 3(1995年)

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  • 最大65536個のプロセッサを16次元のハイパーキューブ接続で構成。
  • プロセッサは64ビットで50MHzで動作し、スーパースケーラ機能と16Kバイトの命令キャッシュMMUを内蔵して仮想記憶をサポート。
  • I/Oチャネルは18本でそれぞれ100Mビット/sである。従来(シリアル)と異なり2ビットパラレルとなったため、ルーティングにフォールトトレラント性を持たせることもできた。
  • 最大構成のnCUBE 3は3TIPS(MIPSの100万倍)、6.5TFLOPSの性能となるが、もちろん最大構成のマシンが納入されたことはない。

関連項目

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外部リンク

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  • A Quantum Multicomputer (英語) - Cosmic Cubeの写真がある
  • Parallel Computing Hardware (英語) - いろいろな並列コンピュータの写真が並んでいる。とくに超並列マシンは個性的な形をしたものが多い。nCUBE2Sの写真もある。