コンテンツにスキップ

Page:Gunshoruiju17.djvu/160

提供:Wikisource
このページは校正済みです

人をとぶらふやうにていひやれる。

 古にありもやしけむ今そしるまたみぬ人をこふる物とは

をんな。返し。

 下紐のしるしとするもとけなくに語るかことは戀すそ有へき

昔男。ねんごろにいひちぎれる女のことざまに成にけるを。

 すまのあまの鹽燒けふり風をいたみ思はぬ方に棚引にけり

むかしおとこ。やもめにてゐて。

 長からぬ命のほとに忘るゝはいかにみしかき心なるらむ

昔男。久しくをともせで。わするゝ心もなし。まいらんといへりければ。女。

 玉かつらはふ木あまたに成ぬれは絕ぬ心のうれしけもなし

昔女。あだなる男の。かたみとてをきたる物どもをみて。

 形見こそ今はあたなれこれなくは忘るゝ時もあらまし物を

むかしいとわかき人にはあらぬこれかれともだちどもの月を見ける。それが中にひとり。

 大かたはあちきなく一本月をもめてし是そ此つもれは人の老となるもの

昔男。女のいまだ世にへずとおぼえたるが。人のもとにしのびて。ものきこえてのち。ほどへて。

 近江なるつくまの祭とくせなんつれなき人のなへの數みん

昔男。梅つぼより雨にぬ歟れて人のまか殿となりける一本てけ一本るを見て。

 鶯の花をぬふてふ笠もかなぬるぬる人にきせてかへさん

昔おとこ。ちぎれることあやまれる人に。

 山城の井手の玉水てにくみてたのみしかひもなき世成けり

かういへど。いらへず。

むかし男ありけり。ふかくさにすみける女を。やうあきがたにや思ひけん。ものへいでたちて。

 年をへて住こし宿を出ていなはいとゝ深草野とや成なん

女かへし。

 野とならは鶉となりて鳴をらんいきてとしはへん古今一本狩にたにやは君はこさらん

とよめりけるに。いでてゆかんとおもふ心う