2016年の熊本地震では甚大な被害が出た(写真:Richard A. De Guzman/アフロ)

8月8日に宮崎県日向灘沖を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生したことを受けて、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」が発表され、1週間呼びかけが続いた。南海トラフ地震は今後30年に70〜80%の確率で起きるとされるが、はたして本当か。地質学者の角田史雄氏と、元内閣官房内閣情報分析官の藤和彦氏は、「南海トラフ地震」の根拠とされる「プレートの移動」が地震を引き起こすというメカニズムに疑問を投げかける。角田氏が提唱する熱エネルギーの伝達が地震の原因だとする「熱移送説」とは? そして、本当に危ない地域はどこか? 全6回にわたって連載する。(JBpress)

(*)本稿は『南海トラフM9地震は起きない』(角田史雄・藤和彦著、方丈社)の一部を抜粋・再編集したものです。

(角田 史雄:地質学者、埼玉大学名誉教授)

【1回目から読む】プレート説は現代の「天動説」、まるで宗教…日本の地震学は50年を無駄にした

西日本における要注意地域

 今回は西日本について見てみましょう。

 西日本には、3つの熱移送ルートがあると考えています。3つのルートとは、①日本海沿岸地域、②瀬戸内海地域、③南海トラフ(太平洋沿岸地域)です。

 1995年の阪神淡路大震災の発生メカニズムは、和歌山市と神戸・淡路島の間には、石板状に区切られた地震発生層のブロックがあります。

 このブロックはブヨブヨな無地震層の上に載っているので、和歌山市でブロックが熱エネルギーで押し上げられ、反対側にある神戸・淡路島のブロックが急激に下がり、神戸側の岩盤が引きちぎられるように裂けたのです。こうして阪神淡路大震災が起きました。

『南海トラフM9地震は起きない』(角田史雄・藤和彦著、方丈社)
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 阪神淡路大震災の前年に起きた1994年5月の滋賀県中部地震から裂け始め、その裂け目は明石海峡方面に延び、最後に最大の破壊が起きてしまいました。

 中国・近畿地方で、今後地震が発生しやすい地域をまとめてみましょう。

 この地域でも30~50年の周期でマグニチュード6~7クラスの地震が起きています。阪神淡路大震災は1995年です。中国・近畿地方で次のマグニチュード7クラスの地震が起きる目安は、2025年から2040年あたりだと予想できます。

 ブヨブヨな無地震層の上に載っている大山(だいせん)火山帯の周りは、非常に地震が起きやすい場所です。

 大山火山帯はほとんどが死火山(100万年以上活動が見られない火山)ですから、噴火する可能性は極めて低いのですが、地下は熱くなっているのです。中国地方の地下の浅いところに高温帯が存在しているからでしょう。

 西日本では「地塊」の境界線に沿って地震が起きていることが特徴です。少し地塊について説明しましょう。