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石破新総裁「日米地位協定見直し」必ず実現を~沖縄の自己決定権は最優先の課題

 自民党の新総裁に9月27日、石破茂・元幹事長が選出されました。候補9人が乱立する中で1回目の投票でトップになったのは高市早苗・経済安全保障担当相でした。閣僚でありながら靖国神社に参拝し、首相就任後の参拝も否定しないなど、ある意味、右派色の強さは安倍晋三元首相を上回るほどで、安倍元首相支持層からも強い待望論がありました。決選投票での逆転は、衆院解散・総選挙を控えた自民党の国会議員たちの中に、これ以上、党の“右ブレ”観が増すのは避けたいとの思惑が少なくなかったことを示しているように感じます。
 “一強”を誇った安倍政権、それを継承した菅政権、岸田政権と、自民党には多様性がなくなり、日本社会にも民主主義の後退の危機感が強まっていました。石破総裁によって、自民党が「安倍政治以前」に戻って行くことが期待できるなら、そのこと自体は悪いことではないだろうと思います。

 石破総裁、そして近く発足する石破政権には様々な政治課題、政策課題が指摘されています。ないがしろにすることは許されない、何があっても取り組まなければならないのは、日米地位協定の見直しです。このブログの以前の記事で紹介しました。総裁選の期間中の9月17日、基地の過剰な集中で過酷な負担を強いられている沖縄の地で石破総裁が口にした「公約」です。改定を何としても実現させなければなりません。

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 日本政府と沖縄県が対立したまま、工事が強行されている辺野古の新基地建設も、いったん工事を止めて、改めて沖縄県と協議を持つべきです。沖縄の過重な基地負担は、他の地域では例がないほど一方的に、強圧的に押し付けられています。人権を保障し差別を許さない観点や、国と自治体の対等の原則の観点を踏まえるなら、沖縄の過重な負担の解消は、最優先に取り組まなければならない課題です。沖縄に必要なのは、地域の人たちが、地域の未来を自ら決めることができる「自己決定権」です。
 
 沖縄の地元紙の沖縄タイムスと琉球新報はともに28日付の社説で、石破総裁に対し地位協定改定と基地負担の軽減、軍拡路線の修正を求めています。一部を書きとめておきます。
 両紙とも、石破総裁が党幹事長当時の2013年、沖縄県選出の党所属の国会議員に、米軍普天間飛行場の県外移設の主張を取り下げさせたことにも触れています。新総裁、新政権に対する沖縄からの視線は厳しいと知るべきです。

【沖縄タイムス】
▽「自民新総裁に石破氏 地位協定の改定進めよ」

 米軍の法的な特権を認める日米地位協定は、事件・事故が起きても日本側が全面的に捜査や調査できないなど、不平等さの元凶となっている。県が長年、改定を要求しているが、政府は運用改善でかわしてきた。 石破氏には言葉通り、約束を確実に実現してほしい。
 「米軍基地を自衛隊と共同管理する」考えも示している。
 県内では事件や事故、環境汚染などが起こるたび、米軍基地に立ち入りできないことが問題になってきた。基地の共同管理が、国内法適用など、こうした問題の解決につながるのか。慎重に見極めたい。
 石破氏といえば県民には忘れられない光景がある。
 幹事長だった2013年、米軍普天間飛行場の県外移設を訴えていた自民党の県関係国会議員5人と会談し「辺野古容認」に方針転換させた。うなだれる議員を横に座らせ会見する姿は「平成の琉球処分」と呼ばれ、批判を浴びた。
 演説会で石破氏は「十分に沖縄の理解を得て決めたかというと必ずしもそうではなかった」と振り返った。
 県民投票で7割が反対した新基地建設を進めるなど政府はこれまで県民の民意をないがしろにしてきた。
 地位協定改定や共同管理が実現すれば沖縄の基地対応では大きな変化になる。県と対話しながら丁寧に進めてもらいたい。
 県民が求めているのは目に見える形での負担軽減だ。

▽琉球新報「自民新総裁に石破氏 県要望に沿う協定改定を」 ※同紙サイトで全文が読めます
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-3501571.html

 総裁選後の会見で地位協定改定を求める党県連など沖縄の声を「等閑視すべきだとは思っていない」と述べ、強い姿勢で臨む考えを示した。
 これを口約束で終わらせてはならない。沖縄県は米軍に特権的な地位を与える協定の改定を要望し続けている。県の要望に沿い、改定実現に向けて具体的に行動することが求められる。対米交渉にも果敢に挑んでもらいたい。
 持論である「アジア版北大西洋条約機構(NATO)」創設を政策に掲げた。しかし、このような施策が東アジアに無用な緊張を生むことにならないか。
 沖縄から石破氏に注文したいのは軍備増強ではなく、対話による平和と安定の構築である。「台湾有事」を念頭に、岸田政権下で急速に進んだ宮古、八重山地区の自衛隊配備は中国をいたずらに刺激するだけでなく、地域住民の新たな基地負担となっている。このような軍備増強路線を修正してもらいたい。
 辺野古新基地建設で沖縄の民意を押しつぶすような強硬姿勢も改めるべきだ。
 2013年11月、党幹事長だった石破氏は自民県選出・出身国会議員5氏の普天間県外移設公約を撤回させ、辺野古移設容認の発表に同席させた。石破氏と、その横でうなだれて座る5氏の姿は「平成の琉球処分」とも例えられた。その時の自民党や石破氏の高圧的な態度を県民は今も忘れてはいない。

 全国紙5紙(朝日、毎日、読売、日経、産経)の28日付の社説も、そろって石破新総裁がテーマでした。総裁選の分析や新総裁、新政権の課題などです。このうち、地位協定の見直しの公約に触れたのは毎日新聞だけです。
 読売新聞は、米国内に自衛隊の訓練基地をつくるとの石破総裁の提案に触れていますが、日米の同盟関係を不安定にしてはならないとの主張が主眼です。産経新聞は、安倍元首相以降の外交安全保障政策を継承し発展させるよう求め、アジア版NATO構想よりも台湾有事の抑止を優先すべきだと主張しています。
 記録として、各紙の社説を一覧にまとめました。