マガジン

  • 一行詩

  • 散文

最近の記事

秋の庭|詩

「秋の庭」 庭の端っこ 黄色い小さなバケツがひとつ 覗き込むと其処は 秋と見紛う香りを吸いこんでいた ひとさし指で其れを突く 拡がる波紋は行き場を失くして 小さな部屋をカタカタ揺らす きみは云う、 その想い純粋であるのなら 尚のこと…… 日が暮れかけた庭の端っこ 紅くめぐる、秋 静かに見つめる影ひとり

    • 一行詩

      • 夏の背と触れる瞳に|詩

        「夏の背と触れる瞳に」 わからない、 僕が好きだと言った季節が知りたくて わからないんだと君は笑った 好きじゃない、 僕の嫌いな香りの後を追いながらも 本当は好きじゃないと君はいう ぴかぴかの自転車で出掛けよう 迎えの時間すら忘れてしまったけれど 僕に軽くぶつかってから 出会い拍子を拐っていった風 其れが、 何処となく君に似ていた気がして

        • 一行詩

        秋の庭|詩

        マガジン

        • 48本
        • 一行詩
          5本
        • 散文
          1本

        記事

          道化のうた|詩

          「道化のうた」 西から昇る月の其れ気まぐれに 道化た唄をうたい続ける 繰りは返したであろう 幾重にもなる影どこまでも深く 伸ばそうにも掠める指の先が 置いてきぼり見つけて立ち止まる 君を奏でる確かなるもの それは誰にも邪魔はさせない 君を独りにはしないから だから、今夜は 西から昇る月の此れ気まぐれな 道化た唄を聴きながら眠れ

          道化のうた|詩

          云わずを愛として|詩

          「云わずを愛として」 西方の地より吹りつく風の 棘た含みに怒りよりも口惜しく 彼方の想い手繰りよせる両の腕 その内にある鬱金の彩 降き荒れあろう長雨のなか 倒れまいと立つ後ろ姿を 誰ならば責めることが出来ようか 少なくも君にその由はなく そしてまたこの僕にも其れはなく

          云わずを愛として|詩

          ボク町あんない|散文

          あのね、僕が暮らしている町の公園は ぜぇんぶ鳥の名前になってるんだ どれだけの鳥がいるんだろう…… なんて幼心に興味を抱いて、日曜日 形の悪いおにぎりを持って歩き回ってた 崖を削ってつくられた高台の公園には 名残のような崖山があった…… 沢山の兄ちゃん達と這い上がって遊んで 家に帰れば怪我だらけの僕に向かって 女の子だから、と怒っている母親の顔を 音のない空間に逃げながら見つめてた 港の近くの小高い山の麓の洞穴には 家も仕事もないおじさんが暮らしていた 駅前や、その近くの

          ボク町あんない|散文

          夏殺しの夜|詩

          「夏殺しの夜」 眠れぬ杜の四季使いが 悠々と夜の空へと手を伸ばす ひとつふたつと星たちは 揃い右まわりの螺旋を描きはじめた 正しく殺せなかった夏 それは白線のあちら側にあります 忙しなく走る星のひとつが はたと此方を向いてそう云った もうすぐ海馬がやってくる 流れを抜けたその星は 僕のまえにすんっと降り立ったあと 白線の向こう側へと消えていく

          夏殺しの夜|詩

          然り気無く宣伝とかしてみたり…… https://stand.fm/episodes/66dfb57ac7ffe0d3443c4268

          然り気無く宣伝とかしてみたり…… https://stand.fm/episodes/66dfb57ac7ffe0d3443c4268

          つうきんろ|詩

          「つうきんろ」 細切れた夏の影が 足もと照らし走り去っていく ざわわ、ではなく さささと素早いわけでもなくて 然れど、其れは 一刹那のよに季節を連れ立ち あたかも夕の浜辺に打ち上げられた 空き瓶の気持ちを運んでくる 目の前の信号が青に変わり 僕は何も無かったように頷いて いつもの景色のなかを 何時ものように走りはじめた

          つうきんろ|詩

          一行詩

          一行詩

          八日目の夏|詩

          「八日目の夏」 暑すぎた夏は針を戻しながら 棚落ちしたスイカを くちいっぱいに頬張って 孤独を遠くへ飛ばして遊んでいた 枯れ葉に恋をした焚き火は 湿った風の袖口をそっと摘まんで 秋の入りぐちは何処にあるのと 瞳を俯かせて問いかける 雨が運んできた約束の時間と ポケットから取り出した秘密の場所 秋という名の旅もいいよね 燻る声のなか 小さなどんぐりが跳ねていた

          八日目の夏|詩

          蜉蝣の杜|詩

          「蜉蝣の杜」 蜉蝣の埋めつく杜のはずれ 微睡んだ唇に重なる時ながれて 純真であれと祈りながら その無垢うばいゆく指先の言祝ぎ 蜉蝣の埋めつく杜のはずれ 滾る血は激しく大地を駆けめぐり 愛、誓いながら 咲き揺れる花へと命そそいで

          蜉蝣の杜|詩

          夜伽ヶ浜|詩

          「夜伽ヶ浜」 月影さやかな浜に鳴く自鳴琴の その啜りに耳を傾ける法師のうた 愛されたいさ、僕だって 風簫に搔き消されてしまいそうな そんな水平線を遠くにみて 終わりの分からない唄をうたう 疲れきった貝の殻に 誰かの声が聴こえた気がした 長編のような星座の連なりから 君の祈りが溢れ落ちていくようで

          夜伽ヶ浜|詩

          都忘れの風|詩

          「都忘れの風」 呼吸のできない空に指なぞり 幾度なく、 読んでは返した終わりの文 まだ知らぬ、 俤をさがす更けの風 その映らぬ言の葉ひとみ傾け 音の続きに耳を澄まして 虫の子ひとつ聴こえぬ晦冥 都忘れのその夜に 誰に抱かれて、何を想うて……

          都忘れの風|詩

          一行詩

          一行詩